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範宙遊泳『その夜と友達』山本卓卓インタビュー|2017年7月

2017年7月25日(火)15:26STスポット

8月3日(木)〜13日(日)に『その夜と友達』を上演する範宙遊泳主宰の山本卓卓氏にインタビューを行いました。山本さんにとってはドキュントメント『となり街の知らない踊り子』(2015年)以来久々となるSTスポットでの公演です。インタビューの前に稽古場見学もさせていただきました。

 


 

➖どうして今回「友情」の話を書こうと思ったのですか?
『タイムライン』(*)では個人的な話を書きましたが、最近自分の経験したことや自分の身の回りに起こったことなどを書いてないなと思いました。というのも、ちゃんと個人的なことを外に出していかないといけないんじゃないかなという漠然とした危機感があって。全てが事実ということは決してないし、かなり創作の部分もあるんだけど、ちゃんと自分が見てきた世界や関わってきたことを、こういうことがあったということを世に出そうと思っています。だから今回僕自身の友情の経験のもとに、これをやろうと思いました。全くの空想から始まったものじゃなくて、体験からスタートした空想。これまでは最初から空想だったんですが。

 

➖最近の範宙遊泳の作品において、俳優の身体をダンス的に使った作品が多いですが、今作は会話、というか会話する身体に注目しているのですか?
そうですね、会話する身体に注目していて、会話する身体以外ない戯曲になっています。だからいわゆる独白みたいなところはないです。

 

➖では久しぶりの会話劇ということですか?
まあそういう風になるのかなと思います。これまで書いてきた戯曲の要素は含まれたりもするけど、今回は会話劇ですね。

 

海外の劇団とのコラボレーションや海外公演を経て、以前と何か創作時の違いはありますか?
今作は、書いてみてこれは会話劇だなと気付いたんですが、当初は会話劇を創ろうとか思ってなかったんですね。僕は自然体でありたいなってすごく思っています。その時々の自然な方法論というか、方法の為に僕は演劇をやっているわけではないので、今までやってきたことに固執してなくて。今はたまたまいろんなことを経て変わる時期なんじゃないかなというか、自分がまたひとつ脱皮して次の段階にきたのかな、ということは思います。でもこれは意図的に変化したわけではなくて、勝手に、自然とこうなっていた。その原因はきっと絶対、海外でやってきたことに強くあるんでしょうけど。

 

稽古中に「(今回の戯曲は)わざと日本語的な言い回しを省略している」と仰ってましたが、それは海外コラボレーションした影響でしょうか。
そうですね。自分の台詞が英語に訳されることを経験してしまったので、言葉の考え方も少し変わってきています。あと日本語的な言い回しというのは他の人が追求しているので、僕はそういうものではなく、普遍的な言葉のあり方というか、国境を超える言葉のあり方というものを考えています。まあでも、これを観ると日本語的だなと思われるかもしれないんですけど。

 

出演者のパワーバランスがおもしろいなと稽古を見ていて思いました。ありそうでなかったバランスだと感じたのですが、キャスティングについて狙いや考えはありますか?
この三人は絶対かぶることがないというのは最初から思っていて、でも彼らはキャラが濃いわけではないんですよ別に。不思議なんだけど。絶対かぶらないんだけど、性格とかも。なんだけど、おもしろいんですよねそれが。みんな多分主役級なんですよ、タイプとしては。ルックスもいいし演技体も主役タイプ。そんな彼らの個性がおもしろいかなーと思ったっていうのはありますね。混じり合わないんだけど、何か似ているというような。全然違う性格なんだけど、何か根底に持っているセンスは近い。それが変なバランスに見えるのかもしれないです。

 

前作『宇宙冒険記6D/タイムライン』同様、今回もSTスポットという白壁で小さめなスペースでの上演になりますが、会場について狙いや考えはありますか?
僕たちが今のところ大きい劇場でやる場合というのは、わりと再演が多いんですよね。小さい劇場、密な劇場から大きくなっていくっていうのが、僕の中で作品の理想のあり方なんです。小さい劇場って隅々まで見えるから、細かく演出をすることになる。その密度の高さが大切なことだと思っているというのはありますね。つまり再演を想定しているということです。大きい劇場にも耐えうるように小さい劇場で創っておくということだし、更に言えば、STスポットは何回も公演を行なっている劇場なので、ある程度空間に対して把握しています。そういう場所できっちりしたものを創る。それをしっかり再演できるクオリティにもっていきたいです。

 

*作・演出・出演、山本卓卓による一人芝居。2017年5月に新宿眼科画廊スペース0にて上演された『宇宙冒険記6D』(作:たかくらかずき、演出:山本卓卓、出演:埜本幸良)と同時上演。

インタビュー・構成:田中美希恵


範宙遊泳『その夜と友達』
日程:2017年8月3日(木)〜13日(日)
作・演出:山本卓卓
出演:大橋一輝(範宙遊泳) 武谷公雄 名児耶ゆり
公演詳細:https://stspot.jp/schedule/?p=3716

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