劇場

レジデンスプログラム「迂回スケープ」始動!

2025年1月29日

迂回スケープは、舞台芸術分野で活動するアーティストがそのとき関心のあることを探求するための場を提供する、STスポットのレジデンスプログラムです。

「迂回」とは、回り道することです。
昨今、アーティストの創作支援や環境整備は一定の広がりをみせていますが、一方で、アーティストが成果にとらわれず思考を深め、自由に実験を試みる場はまだまだ限られています。

劇場の外へリサーチにでかけるもよし。とことん話しあうもよし。空間にただ身をおいて佇むもよし。

目的地にむかう道中で脇道にそれ、そこでの思わぬ出会いによって自己を見つめなおす。
そんな場所としてSTスポットを利用してもらうために、「眺め」「景色」をあらわす接尾語scapeと組みあわせて、本企画を「迂回スケープ」と名付けました。

また、迂回スケープはアーティストのためだけでなく、観客の学び舎でもあります。
ウェブコンテンツとも組み合わせながら、ここに蒔かれた種を観客のみなさんと共有し、劇場の知を開かれたものにするプログラムを目指していきます。

迂回スケープの特徴

①上演を目的としない
効率や生産性に左右されず、めいっぱいアイデアの種をまく

②問いを掘り下げる
好奇心をそそられるテーマから「なぜ?」を引きだし、他分野の知見も参照しながら検証していく

③場を閉じつつ開く
トライアルを観客とも共有し、ともに学び・交流しながら発展させていく

 


実施概要

初年度のアーティストは、篠田千明さんと中村大地さんにお願いしました。STスポットという土壌に根をはって、豊かな創作の時間を過ごしてくれることを期待しています。

[アーティスト]
篠田千明 しのだ・ちはる

コメント

今回STスポットで探求するのは大きく2つ

◯自身の作品をスコアという形で記し、その記されたものを第三者に手渡せるようにするにはどうすればよいのか
→去年STでやったワークショップで使用した、『アントン、猫、クリ』という作品のスコアのプロトタイプを、ChatGPTに読み込ませたり読み込ませられなかったりしながら、ブラッシュアップをしていきます。
◯福留麻里さんの作品にインスパイアされ、その作品構造をもとにした新たな作品を作り始めること
→色んな人からおよそ100以上の擬音(その人の生活の中で聞いたものや好きな瞬間などを切り取る)をもらう、というのをまずは目標にして集めています。また覚えている、思い出す、ということも探求しています。

そのどちらにも関わっているのは、人間はイメージを受け取り、それをいかに自分の内言(外に出てこない内側で響いている言葉)に落とし込んでいるのか、というテーマです。
友人や周りの人に、スタジオに来てもらったりオンラインで話しながら、マイペースに進めています。

 

photo by Graham Meyer

演劇作家、演出家、観光ガイド。
2004年に多摩美術大学の同級生と快快を立ち上げ、2012年に脱退するまで、中心メンバーとして主に演出、脚本、企画を手がける。その後バンコクに移動し、ソロ活動を続ける。
『四つの機劇』『非劇』と、劇の成り立ちそのものを問う作品や、チリの作家の戯曲を元にした人間を見る動物園『ZOO』などを製作し、2018年Bangkok Biennialで『超常現象館』を主催。2019年台北でADAM artist lab、マニラWSKフェスティバルMusic Hacker’s labに参加する。
2020年3月に日本に帰国、練馬を拠点とする。2020年YCAMと共同でオンラインパフォーマンス『5x5x5本足の椅子』製作。2022年には東京の民家を舞台に『no plan in duty』を演出。美学校で『劇のやめ方』という講座を担当している。

 

中村大地 なかむら・だいち

コメント

屋根裏ハイツという劇団をやっていて、2017年以降は「声の小さな会話劇」といったような体の作品をつくっている。作風を作風たらしめているのは俳優たちの実践する演技体であり、それを規定する戯曲の文体である。
そもそも、6畳の小さなスタジオでリハーサルした作品が、本番の会場に入った瞬間に損ねてしまった様々なニュアンスを取り戻すために「スタジオでやったときのままで」演技してもらったところから現在の「体」はある。
だから小さな声にいろいろ託してきたところがある。この「体」はこの先どんな風に変化しうるだろう。たとえば400人くらいの劇場で上演するとしたらどんな風か。大きな声でやってみたらどうなるか、みたいな。この数年でやらなくなったことにあらためて手を出してみたり、あるいは他の作家の文体を読み入れてみながら、静かに発明を試みる時間にしたいなと思っています。

 

photo by Taro Motofuji

劇作家・演出家・屋根裏ハイツ。
1991年東京都府中市生まれ。東北大学文学部卒。在学中に劇団「屋根裏ハイツ」を旗揚げし、8年間仙台を拠点に活動。2018年より東京在住。現在は仙台・横浜・東京をゆるやかに行き来しながら創作をつづける。過去も未来も、生者も死者もいつの間にかゆるやかに共存する作劇が特徴。土地と協働しながら記録をおこなうコレクティブNOOK、部屋というスケールから演劇を捉えなおす集まり #部屋と演劇 のそれぞれメンバー。

[スケジュール]


 

篠田千明 オープンスタジオ

日程:2025年3月29日(土)・30日(日)
会場:STスポット

迂回スケープでの取り組みを外にひらいていく試みの第一弾として、篠田千明のオープンスタジオを開催します。詳細は後日公開。

 

主催:STスポット


お問合せ
[TEL]045-325-0411(平日11:00-17:00)
[MAIL]project[a]stspot.jp
*[a] を@に変更の上、送信お願いします。

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