劇場

「ラボ20#22」参加者が決定いたしました

2019年9月10日

24組にご応募いただき、オーディションを経て、以下の5名にご参加いただくこととなりました。
キュレーター福留麻里による選評もあわせて掲載いたします。

「ラボ20#22」は12月に中間発表、3月に最終発表と続きます。
今後の展開にぜひご注目いただけたら幸いです。


飯塚大周
1992年生。神奈川県出身。大学を卒業したのち、これまでに数多くの演劇やテレビ、コンサートなどに大道具スタッフとして携わる。近年は舞台音響の活動もはじめ、チーム夜営、トリコロールケーキ、地蔵中毒といった劇団の公演やU&Cエンタプライズや吉本興業などによるお笑いライブに技術スタッフとして参加している。
またチーム夜営やトリコロールケーキでは一部の劇中音楽制作も担うなど、音楽方面にもじわじわ活動を広げている。
その他、小さいながらも自身が主宰するプロジェクトとして、写真家・森近友樹とのDTMユニット「やなり」やネット声優の吉谷彰彦らと行うサウンドアート制作グループ「夜響(よきょう)」などがある。
元ラグビー部だがワールドカップへの関心は血圧とともに低め。
SoundCloud : https://soundcloud.com/iizuka-taishu

 

田村興一郎
振付作家・ダンスアーティスト・DANCE PJ REVO(NPO DANCE BOXアソシエイト・カンパニー)主宰。横浜・神戸を拠点に活動。韓国・フランスで滞在制作・上演を手掛けるなど国外でも活動中。作家として緻密な構成力と空間設計、社会や既成概念を疑う姿勢に評判を得ている。そのダンススタイルは”ミニマルハードコア”とよばれている。横浜ダンスコレクションにて最優秀新人賞、若手振付家のための在日フランス大使館賞など受賞。また他の活動では地域福祉型ダンサーの派遣事業を計画中。誰でも振付家になれるWS「身体美術館」開発など一般市民参加型に向けた企画にも展開し、交流・普及を目的とした彩りのあるダンスアーティストを志している。http://danceprojectrevo.wix.com/dance-project-revo

 

チーム・チープロ 松本奈々子
2013 年⽴ち上げ。パフォーマンス作品をチームで制作し発表。現在のメンバーは松本奈々⼦と⻄本健吾の⼆⼈。
近年は個⼈の記憶と集団の記憶を、「⾝体」を媒介に記録し再構成することに関⼼を寄せている。最近の作品に、「20 世紀プロジェクトvol.1-3」(東京各所、2017-2018)、「皇居ランニングマン」(d-倉庫、ダンスがみたい!新⼈シリーズ17、2019)

 

 

宮脇有紀

幼少時よりバレエを始める。16歳でオーストラリアにバレエ留学。帰国後、日本女子体育大学に入学。卒業後 ”社会におけるダンスの価値” を探すため ”まず社会を知る”という安易な考えで、IT企業に就職するが探究心が抑えられず、国内ダンス留学@神戸6期に参加、『Accord』を発表。同年、ソロ作品の創作を開始。”パブリックスペースでのカラダの記憶と気づき”にフォーカスし 『吸収spectrum』『dräpped into』『A/UN』を発表。2019年6月より三浦宏之主催「M-laboratory」カンパニーメンバー。その他修了後、鈴木ユキオ、岩渕貞太、太田ゆかり等の作品にダンサーとして参加している。

 

涌田悠
1990年、東京都生まれ。3歳よりモダンダンスを始める。有明教育芸術短期大学舞踊コース卒業後、フリーのダンサー・振付家として活動。
近年は言葉と身体の関係性に興味を持ち、自作の短歌と共に踊るソロ作品【短歌deダンスシリーズ】を精力的に展開。「カツ丼のうた」など5作品を国内外で発表。2017年、同シリーズ作品「涌田悠第一歌集」が台北(牯嶺街小劇場)に招聘された。
これまでに、KENTARO!!(東京ELECTROCK STAIRS )/横山彰乃(lal banshees)/ジュリー・アン・スタンザック(ピナ・バウシュヴッパタール舞踊団)/岩渕貞太/貝ヶ石奈美(Noroc)の作品に出演。

 


【キュレーター福留麻里による選評】
今回、23組のダンス作品を(うち映像2組、1組はオーディション辞退)見ました。
オーディションでの上演はどの作品もそれぞれに魅力的な部分は違っていて、選考では想像していた以上に悩みました。
上演はとても良かったけれど、ご参加いただかない方もいます。

選考基準としては、
・20分以上の作品を観たいと思えたこと。
・取り組みたいこと、探っていることが、明確であり独特であると感じられたこと。
・ダンスという枠組みにとらわれすぎず、同時にダンスであることにこだわりもあると感じられたこと。
・実験的な性質や、視点をもっていること。

上記のことに加えて、これから半年間続く、創作過程も含めた「ラボ20」という場を活用することが、現時点で意味がありそうと強く思えた人や作品、「ラボ20」というダンス・ショーケースでどういう作品を紹介したいか、ということも含めての選考でした。

オーディションと面談を終えて感じたのは、(これは私自身にも言えるかもしれないのですが)みんな真面目だな!ということでした。
作品に丁寧に向きあおうとすれば真面目になるものだと思うし、大切なことだとも思うのですが、もっとその先にあるものに触れたい、とも感じました。
なので今回「ラボ20」に参加することになった5名の方々には、作品として簡単にまとめたり、形にしようとしたりするよりも、ジタバタしてもいいから、よくわからないところに、現時点での理解では追いつけないところに、手を伸ばし続けてもらいたいな!と思います。私もがんばります!
半年後の上演までの間に、中間発表などもあります。
色々な方に立ち会ってもらって、一緒に考えたりしていく場にしたいなと思っています!
ぜひ観に来てください。

選考では、参加してもらいたい人から決めていきました。
以下に5名の方の選考理由を書いていきたいと思います。

飯塚大周さんは、普段音楽をやっていて、ダンス作品を作るのは初めてとのことだったのですが、音と場に影響されて動く身体の緊張感と、動きの質感がとても独特な説得力を持っていて目を離せない引力がありました。
その場で録音して再生するという手法そのものはそんなに珍しいわけではないと思うのですが、いちばん未知数です。

田村興一郎さんは、ダンス作品を作る際に、大きな意味を背負うことを恐れない態度と、作品の中で扱う動きの繊細なような荒々しいようなどちらとも言えない状態がとても独特なバランスで成立していました。作品を作る、ということ、そして作品制作も含めてダンスで活動していくということに対する意欲や野心がひときわ威勢が良く、説得力がありました。

松本奈々子さんは、時代の変化に対する個人的なアクションとしての作品制作という姿勢をはっきりと示していてよかったです。「皇居前広場」という具体的で社会的な意味を背負う場所を扱いながら、独特の距離感を保つ身体の置き方は、ダンス作品として珍しいなと感じました。ただ枠組みが具体的ではっきりしているのに対し、中身はまだ色々な要素を並べているままにも見えました。半年かけて、動きの中身や発話する身体について探っていく先での変化に期待しています。

宮脇有紀さんは、テーマの設定のしかた、向き合い方、作品にしていく過程、舞台上で動くこと、色々な側面で、とても丁寧で誠実なダンサーであり作家だと感じました。そしてその丁寧さ、誠実さが、舞台上の身体の動きの小さくてささやかなひとつひとつを光らせていました。これって実は、簡単なことじゃないなって思います。これから半年間の試行錯誤を経て、どのようにその先にいけるのか、楽しみです。

涌田悠さんは、自作の短歌とダンスによる作品制作という創作スタイルの独自さはもちろんなのですが、今回、「わからないことに立ち向かう」という課題を設定し真っ向から取り組んでオーディションにのぞんでいて、その切実な姿勢が、やわらかい印象の奥に破壊力を秘めているような踊りの凄みにもなっていて、その熱に、静かに深く圧倒されました。

戻る