2017年10月26日(木)15:56地域連携事業部
今年の4月からSTスポット横浜に入職し、福祉事業を担当しています。ここに来るまでは、横浜市内の障害者施設で職員をしていました。障害がある人の仕事のこと、遊びのこと、暮らしのこと、健康のことを考え支援する仕事です。文化芸術については、何か専門的に取り組んだ経験があるわけではありませんが、自分の生活や障害がある人と過ごす日々の中でつながりがあるものとして身近に感じていました。
前職で障害がある人の支援を考えるときに、出発点となるのは“本人がどうしたいか”でした。その人の普段からの言動や表情など、あらゆる表現をヒントに本人が生活するうえで望むもの、言ってみれば人生哲学のようなものを探っていきます。その過程では、その人独自の価値観や表現方法が見え、自分とは違う生き方に考えをめぐらせることもあります。これは芸術作品を目の前にしたときに、作者が作品を通して何を伝え、表現しようとしているのかを考えたり、作者が感じた世界を追体験したりする感覚に似ています。目の前の対象と向き合って、自分のあり方やものの見方を問い直すということは、障害福祉の現場でも文化芸術の現場でも起こっていることなのではないでしょうか。
現在取り組んでいる『地域における障害者の文化芸術体験活動支援事業』では、調査研究として神奈川県内にある障害者施設や文化施設へお話を伺いに行ったり、実際にアーティストと一緒に障害者施設へ出かけてワークショップをしたり、障害のある方と文化芸術の関わりについて考えを深める勉強会を開いたりといったことを始めています。自分の中でぼんやりと感じていた障害福祉と文化芸術の関係が、いろんな人と話をし、現場を見聞きすることで、少しずつ意味を伴って実感できるようになってきました。
その中でもやはりワークショップの現場は強烈です。障害がある人たちとアーティストが出会う場では、そこにいるアーティスト、障害がある人、施設職員それぞれの存在感やまなざし、感性が交差し、生まれたなにかが形となっては変化していくといった瞬間の連続です。その中心にあるのは、相手の感覚にするっと入り込んで自分の表現と呼応させていくアーティストと、一人ひとり豊かな表現を持つ障害がある人たちとの関係であり、その場を一緒に過ごす時間は、おもしろくてドキドキしてじーんとして、とても心を動かされる時間です。改めて障害がある人の持つ力、アートの持つ力を感じます。
障害福祉や文化芸術、支援者やアーティストなど立場や肩書などに関わらず、人と人が出会い関係しあうとき、それぞれが持っているものが作用し、新たな可能性が生まれるのだと思います。事業を通して少しでも多くの人が出会い、なにかが育つ土壌を耕すことができるよう、模索していきたいと思います。
※福祉事業について詳しくはこちらをご覧ください。
https://welfare-stspot.jimdo.com/
(文・川村美紗)