2017年11月06日(月)12:50STスポット
皆様に支えられ、今年でSTスポットは開館から30年を迎えます。開館30周年を記念し、「ST Spot 30th Anniversary Dance Selection」として、様々なダンス作品の上演を行います。
その第二弾は、STスポットの歴史を語る上で外せない、4組のアーティストによるダンスショーケースです。公演にあたり、参加アーティストに上演する作品について、またSTスポットについてお伺いしました。
また、アーティスト同士にもそれぞれ質問&回答していただきました!
Q1 今回の作品はどのような作品でしょうか?
【Aokid】
僕は今まで2人の作家で作ることを重ねてきました。今回も、一緒に舞台に立ちたい人を探すところから始まり額田大志くんに声をかけました。彼は現在、東京塩麹という踊れるミニマルミュージックバンドのリーダーとして非常に洗練され数学的な音楽を人力で駆動させるすばらしい演奏をコンポーズしている一方でヌトミックという舞台界隈の方にはもちろん知られた若手演劇の旗手として活躍しています。今回はそんな彼に音楽を作曲してもらう形ではなく舞台に一緒に立ってもらい、他の側面を使って舞台作品を立ち上げていきます。いつもは縦に振って出てくるお菓子ボックスを横に振ってお菓子を出す、みたいなイメージです。
【岩渕貞太】
異物や毒物をカラダに取り入れると、カラダはそれをなんとかしようと反応を起こします。嘔吐をしたり、下痢をしたり、下手をすると死んでしまったり。でもそれをなんとか乗り切った時、カラダは以前の私ではない私になっていることでしょう。取り込んだり、取り込まれたり、共生したりしながら新たな生命が生まれていく。そんなことを今している最中です。
【岡田智代】
15年前の2002年の秋にSTスポットで「ソロ18番」という企画があり、そこで初演した『Parade』という10分の作品です。ひたすら歩き続ける作品でした。翌年の5月に「ラボセレクション」という企画で30分の作品として再演しました。今回出演のお話をいただいたとき、あの『Parade』を15年経た今リメイクしたいと思いました。実際手がけてみるとほとんど別作品になりつつあり、いやいや根っこは変わらず、とも思ったり。
【白神ももこ(モモンガ・コンプレックス)】
昨年、大学生と創作をした時にどうしても静かに走れない、止まれない学生のために編み出した方法(走法)がその後もワークショップなどを通して発展してきたので、もしかしたらこれが静かなダンスパーティになったりしないかと考えています。そんな感じです。
ハモニカ奏者の美土さんは、普段はハモニカクリームズという超カッコいいアイリッシュバンドとかブルースとか、とにかくハモニカ一本でフランスを拠点に闘っている方ですが、まるで戦闘能力皆無の私たちの土臭く鈍臭い創作ではいつも奇妙なチカラを発揮してくれます。今回もそんな彼をまた無駄遣いしています。
Q2 STスポットでの思い出などエピソードをお聞かせください。
【Aokid】
学生の時に明治大学の友達の演劇を観に行ったのを覚えています。そのあとは大学の同級生のたかくらかずきくんが参加している範宙遊泳の『労働です』を観に行ってからだんだんとSTスポットへ足を運ぶようになりました。またKENTARO!!さん監修の「N.N.N.」を観に行って同世代の人たちが発表するのを観てかっこいいなぁ、いつか自分も、って思っていた時期はだいたい2009年くらいだったと思います。それからだんだんと通い方が変わっていくことを覚えていて、初めてSTの舞台に立ったのは2014年「N.N.N.5」でした。それからはぐっと身体に馴染んでいきました。ダンスが盛んにあったという時代を僕は通過していないんです……。
【岩渕貞太】
たくさんのダンス・演劇作品をこのSTスポットで観てきました。自作では音楽家・大谷能生さんと2作品創りました。どちらも実験精神溢れる作品で、やりたい放題でした。STスポットでの実験がこれまでの私の活動を支えてくれています。矢内原美邦さん振付のソロ作品でダンサーとしてではなくオブジェとして舞台に立ったことも思い出深いです。ダンスを見にきた時に出演者の方が破った袋から飛び出した血糊が隣の方にかかってしまったことなど、この空間ならではの緊張感もよく覚えています。
【岡田智代】
長女を妊娠して3か月の頃、当時住んでいた大森から横浜まで車で出かけたことがありました。帰りに急にお腹が痛くなり、初めての妊娠で安定期に入ってなかったので夫婦ともども不安で、とりあえず近くのビルに車を入れトイレに駆け込みました。結局ただお腹をこわしただけでホッとしながらトイレを出ると、そこに長蛇の人の列。どうやら劇場のようでした。こんな場所にこんな小さな劇場があって、こんなにたくさんの人が集まっている、ということに驚くとともにしっかり記憶に焼き付きました。開館して間もないSTスポットでした。その舞台に初めて立つのはそれから更に14年の歳月が流れた後。あれやこれや、そのお話はまた今度。
【白神ももこ(モモンガ・コンプレックス)】
学生の頃、少しだけお手伝いをさせてもらって、家が遠くてすこぶる根性なしの私は指で数える程度しか通えず、今考えると本当にやる気とか努力の方向性が五里霧中時代(今も?)。その後、「キレなかった14才♡りたーんず」という企画のオーディション(※STスポットがオーディション会場でした)で、遅刻した演出家を参加者と共に胴上げするという鬼時代を通過。初めてのST公演は演出として初参加した木ノ下歌舞伎で、公演中に停電で上演中断という珍事件。暗闇で木ノ下先生と杉原邦生氏が漫談を繰り広げて間をもたせてくれたことを覚えています。モモンガ・コンプレックスでは、舞台美術人間の試みに挑戦させていただき、この公演で作ったモチーフは今でも様々なところで自在に応用できるものとなりました。
Q3 ご来場者へメッセージをお願いします。
【Aokid】
今回が初めて来場される方はぜひ、通ううちに印象が変わっていき、いつの間にか自身に馴染んでいく場所を=STスポットを見ていってください。自然にそうなっていくものとは思いますが。もちろん今回は30周年ということなので、数多くの作家を輩出した功績を祝ったりしたいのですが、作品はあくまでそれぞれの現在での発表となると思います。30年という歴史に接続していくアプローチは今後改めてしていきたいと思っています。場所が続くというのは凄いことなので、場所の愛で方や関与の方法をもっと探っていくことも考えていきたいですね。いい街、いい場所たりうるには熱量によって工夫を加えられるということを。
【岩渕貞太】
STスポット30周年記念、こんなおめでたい企画に参加できてうれしいです。劇場にも、観にきてくださった皆さまにもこの公演が刻まれて、この劇場の空間がより豊かになっていくよう踊りたいと思います。他の出演者の方々もヤバいラインナップです。お見逃しないよう。
【岡田智代】
ダンスを観に行くと私は何を見ているのだろうとよく思います。人はダンスの何を観に来るのだろう、動き?身体?空間?時間?そんなことに思いを馳せながらでこぼこ、ごつごつとした4組を見てください。
【白神ももこ(モモンガ・コンプレックス)】
全くの新作で新しい挑戦になってしまったのですが、新しい挑戦に寛容で常に発信してきたSTスポットのAnniversaryに素敵なダンサーの方々と出演できてとてもありがたく思います。これを機に、子どもの頃に買ってもらったアレがやっと日の目を浴びることになり、それも密かに初挑戦なので是非チェックしていただきたいです!
[質問]Aokid [回答]岩渕貞太
●横浜について、何か感じていることを教えてください。
生まれも育ちも横浜なので、東京に移り住んだ今も地元感があります。活動も横浜が多いのでホームという感じです。今も多くの小・中・高の同級生が横浜に住んでいるので、横浜での公演はよく観に来てくれます。学校で全然目立つタイプではなかったので、踊る姿に驚かれます。
●30年前の自分自身について、何か覚えていることがあれば教えてください。
小学1・2年生、その頃を思い出すとその風景がなぜか全体的に黄色く見えます。ファミコンと聖闘士星矢とドッヂボールに夢中だったと思います。親がいうには7~8才くらいまでは明るくひょうきんな子どもだったそうです。隣の席の女の子に借りた群青色の色鉛筆が忘れられません。
[質問]岩渕貞太 [回答]岡田智代
●自分に全然似ていないと思う、好きな作家やアーティストは誰ですか。複数回答可。
けっこう難しい質問でした。
好きな作家とかアーティストって、自分の好みだからどこかしら自分に似てる人が多いよね。
思いつくのは康本雅子さんと井手茂太さん、小浜正寛(ボクデス)さん。
ミュージシャンとか作家とか考えてみたけどやっぱりどこか似てる人になっちゃう。あと藤原麻里菜さんという方、おもしろい。
[質問]岡田智代 [回答]白神ももこ(モモンガ・コンプレックス)
●信じるものは何ですか?
わりと全てに疑り深いので、最終的には虫の知らせとか「なんとなく」という感覚を信じています。
(なので、素直になれる方法を教えてください!)
●好きな時間はどんな時間ですか?
お風呂に入っている時と水平線とか地平線を眺めている時間です。
●好きな人はいますか?
いるいる!聞きたいですか?
[質問]白神ももこ(モモンガ・コンプレックス) [回答]Aokid
●普段からアンテナを高くしているAokidさんの最近のマイブームとおすすめの本を教えてください!
おすすめの本は、
アトリ・エワン『コモナリティーズふるまいの生産』、田中功起『必然的にばらばらなものが生まれてくる』、俵万智『サラダ記念日』、パティ・スミス『ジャスト・キッズ』、保坂和志『季節の記憶』、レム・コールハース『錯乱のニューヨーク』、ミランダ・ジュライ『あなたを選んでくれるもの』、スコット・フィッツジェラルド『グレート・ギャツビー』、パウロ・コエーリョ『アルケミスト』、佐久間裕美子『ヒップな生活革命』……いったん10冊!
マイブームというか最近のルーティンは、渋谷ヒカリエ入ってすぐのカフェで打ち合わせ、居酒屋より『PIZZA SLAICE』でビールとピザ、メジャーリーグ中継、シネコンでポップコーンと炭酸、KAATの近くのパン屋さん『BLUFF BAKERY』の大きいマフィンとかですかね。
(構成:萩谷早枝子)
【公演情報】
ST Spot 30th Anniversary Dance Selection
vol.2 ダンスショーケース
プログラム:※上演順未定
[Aokid 作品]
振付・出演:Aokid 額田大志(ヌトミック/東京塩麹)
[岩渕貞太 作品]
振付・出演:岩渕貞太
[岡田智代 作品]
振付・出演:岡田智代
[モモンガ・コンプレックス 作品]
振付・演出:白神ももこ
出演:白神ももこ 臼井梨恵 夕田智恵 清野美土(ハーモニカ/ハモニカクリームズ)
日程:2017年11月9日(木)〜12日(日)
詳細:https://stspot.jp/schedule/?p=3836