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STミーツ#03 譜面絵画 vol.14 喫茶シリーズ二本立て『珈琲にシラップ、時を選ばない無常と風』+『Re:牛乳とハチミツ、ゆれて三日月を喰みる』三橋亮太インタビュー|2024年1月

2024年1月29日(月)12:21インタビュー

STスポットが若手のアーティストにフォーカスしてお届けするインタビューシリーズ「STミーツ」。
第3回目に登場するのは、昨年のショーケース企画 『コーラル&ストロベリー』にもご参加いただいた「譜面絵画」さんです!
STスポットでの公演は今回で3回目となります。

2月の新作公演では、「喫茶シリーズ二本立て」と銘打ち、2018年に発表した『牛乳とハチミツ、ゆれて三日月を喰みる』の改訂版と、その続編にあたる『珈琲にシラップ、時を選ばない無常と風』の同時上演をおこないます。
地方都市にある家族経営のカフェを舞台に描かれる、2つの時間はどのような作品世界を浮かび上がらせるのでしょうか?

「譜面絵画」代表で脚本と演出を務める、演劇作家の三橋亮太さんにお話を伺いました。


Q1:第6回せんだい短編戯曲賞の最終選考にも選ばれた『牛乳とハチミツ、ゆれて三日月を喰みる』は、今回、6年ぶりの再演となります。タイトルに「Re:」が新たに加わっていますが、なにか新しい試みがされているのでしょうか?

6年の時間が流れたことで、劇中で扱われていた戦争や疫病に対しての感覚や意味の肌触りが変わり、そこに加えてそもそも生きる/死ぬといった死生感も変化したと考えています。そこで、そのような事柄をいくつも扱っていた当時の作品を現在の感覚にアップデートすることで、過去を思いながらも未来にも手を伸ばせるような、2024年2月現在ならではの作品を発表することが出来ると考えました。
加えて「Re:」の説明をさせていただくと、再演をする場合には必ず、その時節ごとに戯曲も演出も変化を加えたいと思っています。同じ作品だけども違う作品でありたいという願いや思いを込めて、昔のメールが続いていくときに、「Re:」が「Re:Re:」とつながっていったように、再演するたびに「Re:」が増えていくイメージを持ちながら、今回は『Re:牛乳とハチミツ、ゆれて三日月を喰みる』とタイトルをつけました。

『牛乳とハチミツ、ゆれて三日月を喰みる』(2018年/貞昌院)

Q2:新作『珈琲にシラップ、時を選ばない無常と風』は、前作から時間が経過し、衰退しつつある地方都市のカフェを舞台にした物語とのことですが、なぜ同じ場所の未来の話を新たに描こうと思われたのでしょうか?

冬の設定だった『牛乳とハチミツ、ゆれて三日月を喰みる』に対して夏の設定を持つ作品を上演したいなとざっくり考えていました。この作品はコロナ前の2019年あたりから構想があったもので、当時は様々なニュースやムードから「終わりの予感」のようなものを感じており、「衰退」そのものを描きたいとも考えていました。そこから『牛乳とハチミツ、ゆれて三日月を喰みる』で描かれていた発展性のあるエピソードやモチーフを、マイナスの方向で展開させられるのではと思っていながらも、タイミングなどがあまりうまくいかず、今回の2024年2月のタイミングで上演を行うこととなりました。ですので現在は、当時感じていたオリンピックなどの問題に加えて、コロナや戦争や災害などが立て続けに起きた現在の感覚で、この作品を描きたいと思います。

稽古風景©河﨑正太郎

Q3:三橋さんが劇作や演出を志したキッカケや、演劇の原体験があれば教えてください。

小学生の頃に「将来はお笑い芸人になりたい!」と思い、クラスメイトの友人とコンビを組んで、担任の先生に5時間目の前などに時間をもらい漫才とかコントをやっていました。台本を書いて友人に覚えてもらっていたので、そう考えると当時と今もあまり変わっていないかもしれません。完全な余談ですが、その時にコンビを組んでいた友達が今度結婚します。おめでとう〜。
そして中学にあがってからもお笑い芸人を志望しており「芸人するなら演技力って大事だよな〜」と思い、演劇部に入りました。そして高校も演劇部に入ると、いつの間にか演劇にハマっており、「将来的に劇団を作るなら台本をかける方がいいよな〜」と思い、日本大学芸術学部の演劇学科劇作コースに入ることに決めて、無事に入学することができました。
なので、キッカケというよりも、「こうするなら、こうした方が良さそう」の連続で現在まで来ているのかもしれないと、これを書いている最中に思いました。

稽古風景©河﨑正太郎

Q4:「譜面絵画」の作品をつくる上で三橋さんが大切にしていることはありますか?
また、それを創作現場で実践するために心がけていること、参加者とどのように共有しているかを教えてください。

演劇の醍醐味であり、自身が活動を継続している理由として感じているのが、その日のその場のそのタイミングでしか生まれない想像力が上演時に生まれることだと思っています。稽古場では、その点を常に意識し作品の調整をしています。このようなことをクリエーションに参加していただく皆さんと目指すためにも、肌感覚に近いものを共有することが大切だと考え、時節の事柄などを中心に、話す時間を多く取っています。
作品としても、無い人や物をそこにあるように扱ったり振る舞ったりすることが多く、果たしてそこに何があるのか、果たしてそれがどういう状態/様子なのかをイメージしながら稽古をするので、それぞれでイメージを膨らませながらも、稽古場では参加者の皆さんと共有を繰り返し、面白そうなイメージの方向に向かっていったり、不明点が出たら都度すり合わせられるように努めています。


【プロフィール】
三橋亮太
1998年生まれ。演劇作家。演劇団体 譜面絵画 代表。「観客における新たな体験性(ライブ性)」を制作目的とする。
その場で生まれる体験性の濃度を高めるため、会場や土地の文脈・観客のイメージを介し、想像力が会場空間から外に広がるような演劇作品を発表する。そのため劇場に限らず、様々な空間で演劇作品を創作および発表をしている。また、上記の演劇作品の強度を高めるため、戯曲の構造からも目的に取り組んでいる。
©神代樹里菜




【公演情報】
譜面絵画 vol.14 喫茶シリーズ二本立て
『珈琲にシラップ、時を選ばない無常と風』+『Re:牛乳とハチミツ、ゆれて三日月を喰みる』
2024年2月8日(木)-2月11日(日)
詳細:https://stspot.jp/schedule/?p=11126

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