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STミーツ#01 がらんどう『受能』青柳潤インタビュー|2023年7月

2023年7月21日(金)15:16STスポット

STスポットが若手のアーティストにフォーカスしてお届けする新インタビューシリーズ「STミーツ」。
第一回目となる今回は、ダンスカンパニー「がらんどう」の青柳潤さんにお話を伺いました。青柳さんは7月29日に開幕する旗揚げ公演『受能』で振付・演出を担当されます。
本作は、上演の前に出入り自由のダンス展示の時間が設けられ、自由な鑑賞スタイルでダンサーの身体を観ることもできます。はたしてどんな身体表現が展開されるのでしょうか?


Q1:本作の「静」と「動」という2つの鑑賞スタイルを組み合わせるアイデアはどうやって生まれたのでしょう?

以前、知り合いの企画に伺った際に、自由な鑑賞スタイルで観ることができる形式のパフォーマンスを拝見しました。その時、今まであまり気にしていなかった、隣にいる鑑賞者の存在に意識が向き始めた事がきっかけになっています。
また、チラシ上では所謂ダンサーの身体状態が静的か、動的かという表記の仕方になっていますが、実は鑑賞者の身体状態に目を向けると逆の事が起こっていて、その矛盾しているところが見所となっています。
鑑賞者の身体が自由になればなるほど、我々ダンサーの身体は、不自由になるが、ダンサーの領域が確立すると、鑑賞スタイルが不自由になっていく。今回はその不自由さを消した自由さの共存を目指すのではなく、あえてその状態を分ける事で不自由さを強調し、鑑賞体験に自分という存在を取り入れていただけたら幸いです。

Q2:今回、振付・演出をする上で大切にしていることはなんですか?

本作品名でもある『受能』、コンセプトとしての「静と動」、その他に今回は「visualとmentalの不一致」をキーワードにして 作品制作を進めております。
具体的には、ダンスで言えば自分が上手くやっているつもりでも、周りから見ると全く出来ていないことや、電車に乗っている内側の自分は、とても快適に乗っているが、外からはとてつもない騒音になっていることなど。
つまり、身体と精神の感覚分離を追求したテーマであるため、身体が深く関わるダンス、もしくは身体表現でしか表せないものを模索して、日々振付を考えております。
また、本作だけでなく私の作品全体の傾向として、間や、緊張感などを作品のテイストに用いることが多いです。それは、ダンサー自身にとってダンスしている状態がなるべく密度の濃い時間になることを願っていて、その濃い身体感覚を鑑賞者と共有する事で、刺激的な空間が生まれると思っています。

『受能』のリハーサル風景

Q3:青柳さんがダンスや表現活動を始めたキッカケを教えてください。

私は、高校時代に部活動の先輩に勧誘されたのをきっかけに創作舞踊部で踊り始めました。
初めは、特にやる気もなく流されるがままに部活に行っていました。そんな日々の中で、県大会で初めて舞台に立てた事や全国大会への選抜メンバーに選ばれなかったことなど、多くの刺激を経験していくうちに、いつの間にかダンスにのめり込んでいました。
それ以降は、様々なWSやレッスンに行きながら、自分の表現スタイルみたいなものを探していく毎日でした。 また、高校時代から作品制作は自分達で行っていたため、作品を創る事にも興味がありました。踊りながら創る事に挑戦したかったことが、今の大学への進学やこの公演にも繋がっております。

Q4:今後、「がらんどう」ではどういったことに取り組んでいきたいですか?

がらんどうでは、固定、安定を少し遠ざけて、白紙化を意識していきたいと思っています。白紙化というものが何における白紙 なのか、色々と試行錯誤していきたいです。
現段階では、まず作品のテイストを白紙化すること、クリエーションの手法を白紙化することの2点に絞って取り組んでいきたいです。
作品のテイストを白紙化するというのは、出演ダンサーの入れ替えや、クリエーションの場、本番の環境などのレイアウト変 更、また敢えてダンサーを固定し、長いスパンで私の身体テイストを共有しつつ、常にオポジションの可能性を探る等です。
また、もうひとつのクリエーションの手法を白紙化するということについては、毎度0から1へのアプローチを変えていくというところに重きを置きたいと思っており、作品作りのきっかけを、コンセプトだけに絞らず、ビジュアルや直感、音楽、など普段無意識にやっているであろうこれらのきっかけを意識的にズラしていく事で、作品の根本をより強くしていけると思っています。

『受能』のリハーサル風景

(構成:萩庭真/メールにて取材)


青柳潤
神奈川県出身。高校の部活動で創作舞踊に出会う。16歳でコンテンポラリーダンスを二見一幸、田保知里に師事。これまで、平原慎太郎、細川江利子、高瀬譜希子、二見一幸、小㞍健太などの作品に出演。
現在は、日本大学芸術学部に在学し、作品制作にも力を入れている。

東京2020オリンピック開会式出演。Jリーグ30周年記念スペシャルマッチセレモニー出演。
DaBYレジデンスダンサー。平原慎太郎主催のダンスカンパニー、OrganWorksに所属。

【公演情報】
がらんどう 主催公演 『受能』
2023年7月29日(土)・7月30日(日)
詳細:https://stspot.jp/schedule/?p=10096

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