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【特集】20周年特別号寄稿文:中野成樹(演出家)|2008年7月

2008年7月08日(火)17:17アーカイブ

「なあ中野、お前ちゃんと卒業する気あんのか?」

僕がはじめてSTでやったのは97年で、ちょうど10周年的な感じの時で、それから毎年STでやってて、ただ98年は人の芝居に出演をしただけで演出やってないので、だから厳密には99年からは毎年必ず一本か二本STで演劇を創ってて、で、今年もやればいわゆるV10達成で、で、97年も含めてこれまでにのべ15作品95ステージやってきて、100まであともうちょいじゃん、とか。
なんていっときながらあれですが、僕は日ごろ記録を残すとか、記憶に残るとか、できるだけそういったものから遠いところにいようと努力しています。
だってなんだかいやらしいじゃないですか、そういうの。
結局は広く深く褒めてもらいたいだけなのね、みたいな。まあ、もちろん褒められたいのですが、広く深くね。
でも、なんというかその欲求の匂いをね、できるだけまき散らしたくはない。つまり、僕は人からストイックだと思われたいのです。
というか、深く褒めないでいいから、最低悪く思わないで、で、できればよく思って、くらいの距離感をですね、この世のすべてに持ちたいなあ、と。
ほんと、心の底からそう思っているのです。
なんだけども、なんというか、STにかんしちゃ話は別でね。ガンガン記録残して、ドンドン更新して、エンエン記憶に残してやる、という気迫でね。負けたくないです。STにかんしちゃ、誰にも負けたくない。
なんていっておきながらあれですが、実は去年の12月の公演(*1)のトークとかで「まあ……おそらくSTは今回の公演で卒業になると思います。」とか言っちゃってまして。
いや、なんだろう、ほらちょっと前にさ、契約アーティストとかってのがあって、なんだ、それに選ばれた人たちは自分たち公演を内外問わない感じでSTがバックアップしてくれるという、もう感謝してもしきれないくらいお世話になったあのシステム。けど、岡田くんがドーンといって、なんとなく消えちゃった(笑) でも、なんかね、そういったSTの取り組みみたいのがね、消えてしまうのは悲しいことだなあって思ってて。
だって「若い創作者を支援する劇場」のほぼはじまりとかでしょ? で、すげー偉そうであれなんですけど、なんかそういうのをさ、自分はもう十分に恩恵をうけたから、次の人たちにね、バトンタッチみたいな感じでとかほんと勝手に思って。で、いきおい卒業とか言ってみたわけです。まあ、なんですけど……。ねえ。
20周年ほんとうにおめでとうございます!
STとの出会い、STでの多くの出会いをいつだってどこでだって誇りに思ってます!
*1 中野成樹の短々とした仕事その2『家族でお食事ゆめうつつ』


筆者プロフィール
中野成樹(なかのしげき)
演出家。中野成樹+フランケンズ主宰。翻訳劇の上演にこだわり、誤意訳なる独自の手法で、海外のマスターピースをまったくの日本の現代劇とする。STスポット初代契約アーティスト。http://frankens.net/

※プロフィールは2008年7月時点のものです。

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