T-MADE Dance Companyインタビュー
−海外で得てきたことや、こちら(日本)との違いを教えてください。
前田:ご存知の通り、踊り方はその人の性格を色濃く反映します。
振りのどの部分に注意を払うかは、何を大切にしているかによって変わるのでオーディションに行って驚きました。同じ振りを踊っているはずなのに、全く違う高さや早さにしてしまう。自分らしさをみせること、ユニークと呼ばれることにどん欲なんです。日本ではなかなかユニークという言葉が肯定的な意味で使われないように感じます。島国根性とはいったものですが、狭い土地を分け合って、つながりを大事にして来た種族ですから、調和こそが大事だと無意識に教育されているのかもしれません。
教育と言えば、アメリカの教育課程にディべートやスピーチが多く盛り込まれていることが近年日本でもよく知られるようになりました。自分の意図をはっきりと相手に伝え、要求する能力こそ、その人の教育の質を測る基準です。
それに対し日本では、相手の気持ちを「察する」能力、相手に伝えずに「我慢する」能力が、その人の教育の質を示唆しています。
だからこそ、日本人は細部に目を向け、再現する力に定評があります。渡来した仏教をここまで普及させたり、西洋文化から日本の特産物を生み出したり、外部からのインフォメーションを内に取り込んで新しいものを創造することが得意だと思います。
もちろんそれらすべてがすべての人に当てはまるわけではありませんが、
アメリカでは細部まで目で見て真似ることを時間をかけて教え、日本では逆に自分をさらけ出すのに慣れさせることに時間を割いているように思います。
あちらの観衆は「面白がる」ことに長けていて、理解できないことが舞台上で起こっても、狼狽することなくジョークにしてしまう余裕すらあります。作品の傾向としては、極端に身体的か、ちょっと笑ってしまうようなエンターテインメント性の強い作品が多いようです。日本人は職人気質が根付いている性か、アートという分野をある意味神聖視しすぎている嫌いがあります。ダンスを志すものにとっては興味深い、思慮深い作品が多いですが、それがさらに孤立化をすすめて、ダンス界をよりマニアックなものに仕立てているとも言える気がします。
−今回の「1 or A ?」は初演がアメリカということで、今回は新たにメンバーを集め、また初回公演に出演された方を呼んでおりますが、その混ぜ方や新しいメンバーを選んだ基準などを教えてください。
前田:初演のキャストには全員声をかけました。皆、第一線で活躍しているダンサーですので、スケジュールが合わず、結果Arianaのみが参加する形となりました。
もともと、ありとあらゆることをコントロールしたがるのが私の難点で、以前の私ならば誰をどう混ぜるか、考えに考えた結果キャストを決めただろうと思います。ただそうすると、自分が想像した範疇から作品が発展しないんです。
Chance Danceではないですが、偶然を許容してこそ突拍子もないものができあがる気がします。
私の主観的な考えを持って振付けし、3人の全く別の人格に踊ってもらうことで、バランスが保てるのと同時に新しい風を吹き込んでくれます。
−3人それぞれの力強さとその調和が魅力的な作品だと感じたのですが、構成を変化させるときなどはどの辺りに気をつけていますでしょうか。
前田:この作品は特に、コンセプトありきの振付けです。
「一人なら」「誰かと一緒なら」「誰にもみられなかったら」、たくさんの質問を自分に、ダンサーに問いかけながら、ありとあらゆる場合を再現することに構成を費やしました。緩急やコントラストをつけると無難にしっくりしてしまうところを、どうやってひねれば新しい調和が保てるかを考えてみたり、ちょっと居心地の悪さを提供して観客に挑戦してみたり、まとまりのいいだけのダンスではないものを作るように心がけています。
−今後の、振付家としてやカンパニーとしての目標を教えてください。
前田:エンターテインメント性と芸術性とを兼ね備えた作品を制作し、ダンス界をもっと一般の方々の踏み込みやすい環境にすることがまず大きな目標です。