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関かおりインタビュー〜風景に込められている記憶〜


群々(むれ)などでのグループ作品、ソロ作品と様々な形態で作品を発表している "関かおり"。技術に裏打ちされた身体から立ち現れる光景。そしてそれは観ているものの感覚を呼び起こす。

今回はメールにて、これまでの活動を含めて作品制作についてご回答頂きました。

--幼少の頃にバレエを始め、そして創作活動を始められた経緯についてお聞かせ下さい。

 

経緯と言えるものかわかりませんが・・・バレエはやっていましたが、お姫さま役をやるなら、カラボスとかアクの強い役の方がやってみたいなぁと思うような子供でした。そんなわけで小学校の時から、ちょっと振りというか動きを創って友達に見せてみたり、音楽鑑賞の授業では曲を聴きながら踊りを考えたりして過ごしていました。曲を聴いて浮かぶ振りはほとんどバレエでしたが、友達に動きを見せた時は、女ラッキィ池田とか言われたことがあり・・・、どんなことをやっていたかすっかり忘れましたがこの時はおそらく、全然バレエじゃないことをやっていたのだと思います。

 

舞台で発表したのは、高校卒業後にモダンバレエのスタジオに通い出したのですが、発表会に出させて頂く際に先輩に振り付けを頼んだ所、自分で作ってみたらいいと言われてやってみたのが最初です。

 

 

--映像含めて幾つかの作品を拝見しておりますが、観客として非常に身体に目がいく印象を持っています。お話し頂いた経緯の中で、振付や動き方、身体に影響や変化があったことなどありますでしょうか。

 

なんでクラシックをやっていて、こうなったのかよく聞かれるんですが・・・、選ぶ振りが今のようになった具体的なきっかけはないように思います。ただ私の中で、振りやポーズにありなしはあって、絶対これ、という正解はあります。ポーズを追求するという意味では、クラシックと繋がりがあるかなと思っています。

また、今まで作品に参加した、Co.山田うんや大橋可也&ダンサーズでの稽古やリハや、そのメンバーからたくさんの影響や刺激は受けています。

今、自分の活動をするときにもそこで得たことにとても助けられていますし、今まで関わってきた人との何かがなくなっても、今の状態ではないと思うんですが、具体的に自分の振りや動きのここがこんな影響を、ということは言えません。

 

身体に変化があったのは、2008年にイスラエルで行われたGAGA intensiveに参加したのが大きなきっかけです。2週間みっちりダンス漬けの生活を送って帰国したら、心も身体も明るくなってました。その直後に発表した「ゆきちゃん」から身体に対する意識が変わったなと思っています。どんな稽古の仕方が自分にはあっているのかとか、考える糸口がちょこっとわかったような気がしています。今はまたそこからどう進んで行けるのかが課題です。

 

 

--ソロ作品とグループ作品など既に多くの作品を発表・参加されており、そこで振付する/される人間が異なりますが、それらでの作り方の違いなどはありますでしょうか?

 

ソロとグループ作品で創り方に大きな違いがあるかというと、そうでもないです。

客観視できるという意味では、グループというか、他人の身体に振りつけている方が断然やりやすいですし、楽しいです。ただ、その人によって似合うものが違うので、それを見つけるのにかなり時間が必要な時もありますし、ダンサーそれぞれ、どんな言葉なら届きやすいのかも違うし、ものすごく悩みます。

自分の中に生まれているものを、相手にピンポイントで伝えられる様になるには、未熟でまだまだ時間がかかりそうです。

今後、もっとじっくりとクリエイションに向かえるよう、環境を整えたいと思っています。

 

自分一人の活動と、群々などでの共同制作で作品を発表するときは、

個人の活動の場合、自分の世界をどんどん掘り下げていく作業のみですが、共同制作の場合、相手ありきなので、思ったようにいかないフラストレーションもあります。ただそれ以上に、一つの言葉から人それぞれ無数にイメージが広がっていくので、自分一人では思いつかないところへ進めたり、今まで見られなかったものを発見出来たりするので、その中で自分がどのように立つか、あれこれ考えられるので、とても刺激的です。ディスカッションで自分の考えを言葉にするという、私の苦手分野もここで鍛えられています。

 

一人の作業でも、誰かがいても、自分に嘘はつきたくないと思っています。

 

 

--12月に公演された「マアモント」では"香り"も作品の構成要素にハッキリと加えられ、それは感覚の刺激を促すもの--嗅覚が刺激されることで他の感覚も鋭敏になるもの--だったと感じたのですが、そういった感覚といったものはどのようにお考えでしょうか?

 

作品を発表することで、普段ダンスに興味を持たない人が興味を持てるようなことを取り入れて行きたいと思っています。

例え映像に残らなくとも、その場所にいなければ味わえないものを創り続けたいです。

そういった意味でも、観ることが、お客さんにとっての体験に繋がったらよいと思っています。

 

例えば匂いから記憶が引き出されて、その時の空気だとか、風景だとかを思い出すことがあるように

身体の中に残っている記憶は、決して目で捉えたものだけではないはずです。

無意識でも意識的にでも、たくさんの感覚を積み重ねて生きていると思います。

 

作品を観てもらうことで、考え方を共有するのはなくて、感覚を共有できたらいいなと思っています。

 

私自身は、「このあたりのものを思い描いてもらえたらいいな」と思って創っていますが、

例えば、虫や動物の行動を観ていて、一見不可解なことでも、

自分の感覚に近づけて想像して解釈するように、

目の前で起こる出来事の向こう側をみてもらうような時間になれば良いと思います。

 

前回は匂いでしたが、例えば触覚とか視覚、聴覚、

そういう五感を使って、全身で作品を受け取ってもらえるようなものを創りたいと思っています。

--今回はありがとうございました。


[関かおり/プロフィール]

1980年生まれ。幼少よりクラシックバレエを学び、18歳よりコンテンポラリーダンスを始めると同時に創作活動を開始。主な作品に『あたまにあ』『ゆきちゃん』『にぇーにぇ』『パラティカ』等がある。2008年STスポットラボ20#20で発表した『ゆきちゃん』ラボアワードを受賞。同作品で踊りに行くぜ!vol.10に参加。2010年渋谷SpaceEDGEにて「マアモント」発表。ダンサーとしては、Co.山田うん、大橋可也&ダンサーズ、タバマ企画等の舞台作品や、Philippe Chatelain & Virginie Laveyのビデオ作品等に参加。また、2007年より、同年代のアーティスト等と群々(むれ)を立ち上げ活動する他、木村美那子や岩渕貞太等との共同製作、絵画やコントラバス奏者とのコラボレーション等多岐に渡って活動している。HP:http://kaoriseki.info/

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