ニュース

kopicインタビュー〜見えているもの、触れられるもの〜


ダンススタジオで出会った服部未来、高田真希に、音楽や映像に造詣の深い島崎隆輔からなるダンスユニット「kopic」。様々なガジェットに囲まれ、ゆとりと呼ばれる世代。そしてフラット化していく中でダンスの更新を狙っていきたいと語る熱意は作品にも表れております。落ち着いた物腰でしたが、とてもパワーのある3人組です。

               (インタビュー・テキスト:佐藤亮太)

 


震災でゼロから作り直し

−本日はよろしくお願いします。では、まず結成の経緯などお聞かせください。

 

服部:まず、ここ(服部と高田)がダンススタジオが一緒で、N.N.N.2に応募したいねと話していたのですが、もう一人必要で。そこで高校の同級生だった島崎君がパフォーマンスにも興味があると言っていて、女の子3人よりも男の人だったり、ダンスではなく他の面でカバーしてくれたりする人を入れたくて。(島崎は)音楽を作れる人なので、誘ったら「出たい」と言ってくれて。

3人ともバラバラな感じです。

 

高田:私は元々ストリートダンスをしていたので、その感じがまだ残っています。

 

服部:真希ちゃんはストリートダンスでも何か変なんですよね。

島崎君はダンスに初挑戦だったので、足をくじきそうになりながら。ダンス未経験の人が踊るのも面白くて、島崎君がキーマンになりますね。

 

−応募作品が出来るまではどのようなものだったのでしょう。

 

服部:ちょうど練習しているときに地震が起こりまして、それで今まで作り上げてきたものがゼロになってしまって。

 

高田:関西や実家に避難したりなどもあって、精神的にも弱ってしまって。

 

服部:稽古場として使っていた施設も閉鎖してしまい、4月になってしまうし半ば諦めていて。そんな中で真希ちゃん(高田真希)も帰ってきたので、撮影日も決めてもう一度気持ちを切り替えてやってみようかと。

 

島崎:撮影日も提出日3日前で。

 

服部:最後は朝も夜も集まって頑張ったよね。昼はみんな予定あるので、時間を作って公園かで練習したり。

 

−本当にギリギリですね笑。再出発ということですが、作品は震災前のものを継続したのでしょうか。

 

高田:何してたっけ?あんまり覚えてない......。

 

島崎:曲も違ったし、全然違ったかな。もっとかわいくてゆるい感じだったよ。

 

服部:変わったのかな。でも、(こうして選んで頂けたので)諦めなくてよかったね。

 

 

見えるものと触れられるもの

−では、その作品のここを見て欲しいというところお願いします。

服部:島崎君は映像とかも好きでヴァーチャルな感じなんですよね。ネットとか2次元とか。

 

高田2人と島崎君で差をつけるために、物をたくさん使おうかという案があって。

 

服部:現代っ子の象徴で、物を手挟なせないというのとヴァーチャルの世界。ヴァーチャルの世界のものは触れられないけど手放せない、ということを表していきたいなと。

 

島崎:『電脳コイル※1』でデン助というキャラクターがいまして、デン助はAR(拡張現実)の世界のキャラクターなので眼鏡を付けないと見えないので触れないのですが、幼い頃から享受してきた人間にとっては愛すべき存在なのですよね。一方でそのARに行きすぎても危険で、物語の中でも問題が起こって母親が子どもを抱いて「あったかいでしょ、触れるっていうのは大事なのよ」と諭すシーンがあるのですが、それでもARの中のデン助を否定出来ない。

 

−私も視聴していましたが、大変面白い作品でしたね。

 

島崎:自分は映像を勉強していて、実体のないもの、画面上のものや投影されるものにもリアリティはあるのですよね。ダンスで自分の身体を動かすとカメラ越しに見ているものとは異なり、実感することで(映像を作るための)フィードバックも多いです。

そこで、このグループでは自分が培ってきた映像の素養と実際に起こる場所としての舞台の間を行き来するように、2人に対して身体を一度俯瞰した部分を意識してやりたいです。

 

−今回、映像は使われますか?

 

島崎:色々と検討していますが、まだ秘密です。

 

 

同世代の雰囲気から

−では、グループとしてはどういったことをめざしていますでしょうか。

 

服部:最初に話し合ったときに「ゆとり世代」という言葉が出てきて、そういうゆるい世代だから私たちが生きてきた時代が醸し出す雰囲気をグループとして出していけたらと思います。

 

島崎:目先の新しさではなく、ジャンルの更新を目指していきたいですね。

 

服部:新しいことはやり尽くされてる気はするよね。

 

島崎:だから、その中で優秀な組み合わせは当然みんなやるし、新しいことをしようとするとは思うけど「もう新しいことは出来ません」という諦めも見えたりすることもあって。

僕は(ダンスを)やったことのない身なので新しさを感じるところはありますし、ダンスとは異なるところで今まで培ってきたものを使って違うものを見せられたらと思います。

 

服部:あと、これもみんなで話したときに出てきたのですが、同じくらいの年齢くらいだと作風が似てるねって。その似てるものに入りたくなくて。

 

−私もそれが年齢によるものか世代によるものか具体的に指摘できるわけではないのですが、同様のことを感じることがあります。

 

高田:本番はお客さんと私たちしかいないから何とかしなきゃね。

 

服部:私と真希ちゃんはちゃんとダンスを頑張りたくて、島崎君は踊れないからこその身体表現を見せていきたいと考えています。

 

−応募資料を見たときに、差は分かるのですが嫌な違和感がなかったんですよね。後半の島崎さんの動きなどとても面白かったです。

 

服部:そういう頑張ってるところで見せたいです。

 

高田:あまり上手くなって欲しくない。上手くなっても出来る人みたいな上手さになって欲しくなくて。

 

服部:私たちも超上手いっていうタイプじゃなくて、もちろん上手くなりたいのですが、自分の個性を大事にしつつ踊っていきたいですね。

 

島崎:いい締めだね。"自分の個性を大事にしたい"

 

−なるほど。応募された資料から何かやってくれそうなパワーを感じた理由がわかった気がします。本日はありがとうございました。


 

原案・監督:磯光雄。2007年にNHK教育テレビジョンにて放送された。文化庁メディア芸術祭アニメーション部門をはじめ各賞を受賞。



【PROFILE/kopic】

服部未来、高田真希、島崎隆輔の3人からなるダンスユニット。

ドリーミーでありながらも、身近な感情につながるような表現を目指す。



インタビューTOPに戻る