ニュース

木村悠介インタビュー〜なぜ踊り、そこで観客は何を見るのか 〜


本企画の中で唯一の関東圏以外からの参加であり、映像も使った作品の上演を予定している"木村悠介+松木萌+吉本和樹"。今回は中心になる木村悠介さんにお越し頂きました。出自の異なる3人に関して、また、そういったお話を伺うことで踊ること・舞台に立つことに対する考えと作品の繋がりが見えてきました


背景がバラバラな3人】

--遠いところからありがとうございます。まず、この3人が集まった経緯についてお聞かせください。

 

木村僕はもともと演劇をやっていて、京都造形芸術大学でダンスを始めました。その時の山田せつ子さんの授業で、僕が初めて振付けをしたのが松木だったんですね。それ以来、僕が振付けをする時にはよく踊ってもらってます。当時、僕らの学年には小さい頃からクラシック・バレエをやっていた人が多かったのですが、松木はマイケル・ジャクソンのPVを見ながら家で振りをコピーしてたりだとか、毛色の違う身体をしていたんです。

僕も大学からダンスを始めたぐらいだから、しっかりしたクラシックのテクニックを持った子たちに振付けをするのはなかなか敷居が高かったですし、松木の方が自分に近く感じたんでしょうね。ちなみに彼女自身も振付けをやってるんですけど、今は花本ゆかっていう子と共同で作品作りをしています。彼女たちは先日、大阪のCONNECTという舞台作品のコンペのような企画で優秀賞をもらって、今度は精華小劇場で作品を上演することになってます。

吉本和樹は写真が専門で、実は彼も大学が一緒だったのですが、学科が違ったので大学時代はお互い知りませんでした。IAMAS(情報科学芸術大学院大学)で初めて知り合って、彼も舞台に興味があったり、色々と共通点があって話すようになりました。彼が撮った写真を見せてもらったり、どういうことを考えてるかとか。今回の作品の初演では、始めは松木のソロとして作っていたのですが、違う要素を入れたくなった時に彼の写真を使う事を思いついて、どうせだから彼自身も出てもらおうと(笑)

 

--松木さんや吉本さんとの経緯を聞いて、既存のものやカッチリしたものに異なる要素など持ち込んでいるように感じたのですが、そのあたりはどうでしょう?

 

木村:たぶん、変な体が好きだっていうのはあると思うんです。でも、それと同時に、山田せつ子さんがよく言っていたことなのですが「自分の中からテクニックを見つける、自分の身体のテクニックを探せ」ということがあって、いわゆる既存のテクニックからズレていても、そこに説得力があるような身体や動きに惹かれます



【なぜ、踊るのか】

--応募された映像と出演者数や場所など変わりますが、作品である「double fact」はどのように変えていくのでしょうか?

(※初演の映像は木村のHP等にてご覧になれます)

  

木村:前回は劇場ではなくスタジオのようなところで、ライブとかと一緒のラインナップの中で発表したんですね。そこで、お客さんを引き込んで集中させるために物語のような雰囲気を作ったのですが、今回はダンスの場なので物語は無くしていこうかなと。

しかも今度は僕がドラァグクイーンで出るんですけど、ドラァグクイーンって見たことあります?

 

--映画でだけですね。

 

木村:ああいう格好で舞台に乗ると嘘っぽいじゃないですか。その嘘が全面に出てきたら良いかなと。ダンスしていることと演じることが重なる関係が見せられたらと思っています。

 

--そういったこと(演じることとリアルさ)は気を使っているところでしょうか

 

木村:色々な作品をやっているんですけど、客席と舞台ということを考えることは多いです。お客さんが見ている中で踊ったり演じたりすることは何なのかとか。ダンスに限れば、踊っている人が「何で踊っているんだろう」ということが気になります。幼い頃からやられている方は踊ることが日常になってたりするんですよね。

でも、僕にとって踊ることはとても特殊なことなんですだから、「踊りたいから踊る」ではなく、何かしらのダンスする欲求が見えてきたりとか、踊らないといけない状態っていうのが見えてきたりすると面白いです

 

--実は私も大学からダンスを始めたので「なぜ」という問いにとても共感します。

ところで、様々なパフォーマンスをされていると言うことですが、どのようなことをされているのでしょうか?

 

木村:いわゆる演劇っていう感じのことはやらなくなったんですけど、パフォーマンスに近いものが最近は多いですね。

 

--ちなみに、これ(NxPC.Labのイベント)では?

 

木村:これではドラァグクイーンやってます(笑)

この企画はIAMASの有志でやってるんですけど、Ustream 等が出てきた中で、新しい感覚のクラブ体験が必要じゃないかということでやってます。もちろんUstでも配信しながら。僕のドラァグクィーンも体にセンサー付けたりとかサイバーな感じでショーとかをしてます。こっちは自分の作品作りとは少し別で、楽しむことが一番なんで、ちょっとバカっぽいことをやりたいなと思っています。

 


観客を信頼している】

--作品を作る上で気を付けていること、今回の作品で打ち出したいことなどお聞かせ下さい。

 

木村:今回の作品は、さっきの話と被るのですが、ダンスとか身体とかを「見る」ということに焦点を絞ろうと思っていまして、ダンスを見ることがどのくらいの広がりを持つのかとか自分達が何を見ているのかとか−フォルムやムーブメントなのか、それとも違う何かを見てるのかとかを考えたいと思っています。

僕はお客さんをけっこう信頼していて、作品をどのくらいの深さで見てくれるかというか、作品を見ながらどのくらい色々なことを考えてくれるかとかというのを、かなり考えてくれると信じてるんですよね。そこは守っていきたいと思っています。そこをなくしてしまうと何だかどんどん分かりやすくなってしまうので、今回もそこを確認しながら作っています。

この作品は、今回はこういうコンセプトで、こういうサイズで上演しようとかは考えていますがもっと違う形もあると思っているので、これからも出来るだけ色々試しながらどんどん進化させていこうと考えています。例えばインスタレーションみたいな展示だとか。今回もそうですけれど、自分のいる場所(岐阜、舞台芸術)にとらわれずにどんどん作品を発信していこうと思っています。

 

--今回、その進化の過程を目撃できることを楽しみにしています。今日はありがとうございました!



PROFILE/木村悠介+松木萌+吉本和樹

京都造形芸術大学 映像・舞台芸術学科卒、情報科学芸術大学院大学(IAMAS)在籍の木村悠介を中心としたユニット。自身も振付などを行う松木萌、写真を中心に活動する吉本和樹と共にジャンルレスな表現を目指す。

http://www.iamas.ac.jp/~yusuke10/



インタビュー一覧に戻る