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かえるPインタビュー〜かみ合い流れる時間と人〜


 CCC(コンドルズ振付コンペティション)」で優勝を飾った「星になろうよ~青春のキューカンバ~」など、どこか一筋縄ではいかない作品を送り出し始めた大園 康司と橋本 規靖による"かえるP"。"かえるP"とは一体何者なのか、お話を伺ってきました。納得するまで意見を言い合う声の絶えない稽古場でした。




お互いやりたいことをやるために】

--まず、結成の経緯についてお聞かせください。


大園元々、学生の時から一緒の舞台に出演したり、僕が在学中に振付した作品に橋本君にも出てもらったりしていたのですが、こうして2人で組むようになったきっかけは去年創った『きゅうり』ですね。


--きゅうり?


大園

学習院女子大学が数年前から感劇市場という舞台芸術のフェスティバルをやっていて、その中のプログラムでCCC(コンドルズ振付コンペディション)というものがありまして。優勝したら賞金が出るんですよね。うまいことお金貰えないかなっていう不純な動機で(笑)。そこで僕が橋本君ともう一人を誘って、きゅうりを使った作品を創って。

一同爆笑


大園それがそのコンペのグランプリをいただきまして。そこからですね、二人でユニットを組もうかという話になったのは。

※この「星になろうよ〜青春のキューカンバ〜」はYouTubeでご覧になれます)

これが発端で、卒業してからそれぞれ他のカンパニーに参加していたのですが、自分たちで作品を創っていく、ホームのような場所をつくりたいなとはお互い思っていて。そういった経緯があって、今は二人でユニットを組んでいます。


--そこから今回の企画に応募されたきっかけというのは?


大園とにかく僕らにはまだ経験が絶対的に足りない。色々な人に観てもらいたい、僕らがやっていること、創ろうとしているものを知ってもらいたい。なので、今回のような、今まで関われるようなことのなかった方々とご一緒できる企画はありがたいです。


--確かに制作やスタッフ等を集めるのは大変なところありますものね。


大園お金もないですし、知り合いも少ないですし、時間は...時間はありますけど(笑)


--今回の作品「ケチャップ」の作者は大園さんですが、出演されるお2人から言いたいことなどありますでしょうか?

 

米田私はまだついていくのに精一杯です。今まで自分がやってきたものと求められていることが違っていて、それを体に叩き込んでいます。

 

橋本:僕は稽古中も散々口出ししています。あれやれこれやれって。

 

大園:お互いそうですね。それがこのかえるPというユニットの特徴でもあるんですが、片方が創り手のときは、もう片方がものすごく意見を出して、作品に対しての議論を毎回交わします。それこそドラマトゥルクのように、振付家の一番の理解者であり、なおかつ客観的に作品を考える立場です。

 

橋本:やりたいことはある程度前もって聞いているので、それで要求されたことにこうした方がいいんじゃないかとか。整えてあげる人ですね、しっかり手綱を握るともいえるかな。

 

--そのように言い合える関係は作品を作っていく上でもステキですね。



【人間を見たい・時間を作りたい】

--今回の作品とは少し離れますが、お二人の「このようなダンス・舞台作品を作っていきたい」というものはなんでしょうか?


橋本:僕は人に興味があって、肉々しいというか人間そのものというか、もっと人間の暗いところを見てみたい。たとえば、普段こうして会話しているときではなく1人でいるときの自分らしさ−原風景ともいえるのかな、そういうキーワードを常に考えています。

それと、人ってどこまでいっても1人だなっていうことを表現したい。こんなに一緒にいるのに「あぁ、一人だなって」思う瞬間が僕にはあるんですけど、どんなに人数がいても2人でもずーっと1人だなっていう、わりと不安...なのか希望なのか分からないですけど。そういう作品を作りたいですね。 


大園:僕が最近よく思っているのは、人の心が動くって、どういうことなんだろうなと。心が動いていく、つまり『感動する』というのはすごく不確かなものだと思っていて、それをどうやったら具体的に提示できるのかなとは常々考えています

あと「時間の芸術」という言葉が好きで、時間を共有することが大事だなと思っていて、それはつまり人と人とが触れ合ったり、同じ空間にいて一緒の時間を共有したりすることでしか味わえないもの、創りだせないものがあると思ってます。

 

--私は、いくつかのシーンしか拝見してないのですが、そのシークエンスに出演者がかみ合って流れ、波で進んでいくような印象を受けたので、今の話を聞いて頷くところが多かったです。 

 

大園:『時間性』というのはいつも大事な要素として意識してます。どういう時間の経過が人の体をどう変えていくのだとか。例えば体感時間って全然違うじゃないですか。集中しているときはいつの間にか時間が過ぎたり、何もしていないときは時間が経つのが遅かったりだとか。そういった圧縮されたり引き延ばされたりする時間の感覚を、一緒の時間を共有することで出していければなと思っています。

そこに身体ををどう扱っていくとか、具体的にどういうものと関わっていくかとか、そういうことテクニカルな部分も色々考えてはいます。そのバランスですね。


--今回の作品の進行具合はどうでしょうか。

 

大園:うーんと、ギリギリです。構成自体は一応出来ていますけど、そこからがスタートラインで、そこから如何に作品のことを共有できるか、自分の心と身体に落とし込んでいけるかが勝負ですから。まだまだこれからです。

あと、突き抜けたい。よくあるもので終わりたくない。簡単に言ってしまうとオリジナルなものを作りたい。みんなそうだと思うのですけど、そこをどう持っていくか。そこの一番やりたいことと僕らが経験を積んでどういうことを踏まえてやっていくかがプラスされていくと出てくるものがあるんじゃないか、と。その、第一目的は見失わないようにしたいですね。

 

--突き抜けた新作が出来上がるのを楽しみにしています。本日はありがとうございました。

 


PROFILE/かえるP

大園康司と橋本規靖が桜美林大学を卒業後、互いの創作意欲を発展させあう場として設立したプロデュースユニット。20106月に第一回公演『米粒』(振付:構成・橋本規靖)を上演。かえるPのほかに、大園は冨士山アネット、橋本はNibrollなどで活動をしている。

http://kaeruppp.blog76.fc2.com/



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