2012.04.30
N.N.N.というダンスの公募企画は今回で3回目になります。
過去の参加者は積極的な作品発表を続けていたり、コンペティションに選出されたりする方々も出てきました。そこで、第3回目が行われる今年、過去の参加者と共にN.N.N.では何が出来たのか・何が出来るのかについて座談会を行いました。(座談会日 2012年4月9日 @STSpot)
参加者は以下の4名です。※プロフィールは末尾に記載
大園康司(かえるP、第1回選出)
木村悠介(木村悠介+松木萌+吉本和樹、第1回選出)
いづみれいな(flep funce!、第2回選出)
マノリツコ(flep funce!、第2回選出)
N.N.N.に参加して
--みなさん、お久しぶりです。今回お集まり頂いた方々はN.N.N.後も、STスポットと関わってくださった方々ですね。特に、大園さんは昨年の11月に提携公演でかえるP『ダイヤの乱れ』を上演、いづみさんはヨコラボ'11集団創作コースという長期WS、マノさんは東京デスロック『再/生』などがありました。
それでは早速ですが、N.N.N.に参加してどのようなことがあったか・どのようなことを感じたかなど教えて頂ければと思います。
大園:まず、とても良くして頂いたなという印象です。僕らはこの世界ではまだまだ若手だし実績も無いので、バイタリティーを持って自分で作品を発表していくことから始めることが大切だと思っていて、その受け皿の場としてありがたかったなと。
稽古場が使えたり、ノルマがなかったりということもありますが、(劇場やスタッフと)次に繋がるような関係もできたし、公演を終えた後も作品に対してのフィードバックがありましたし。
あとは個人的なことになりますが、(テクニカル)スタッフ陣が大学の先輩だったということもあり、とてもやりやすかったです。
--こちらもやりたいことは劇場の制約の中で出来ることはやってもらおうという姿勢ではありましたが、もう少し上手くサポート出来ればということはありました。そういった中でスタッフの方々には私も助けられました。私はこの企画が初めて進行についたものだったので。
続いて、1回目の参加者で岐阜からの応募だった木村さんです。
木村:これまで自分の作品を関東で発表することはなかったので、それをほとんど初めてのお客さんばかりの中でどう受け取ってもらえるか、それを試せたことは良かったなと思っています。
ちょうどプロデュース(※1)など他の仕事をやめて、自分の作品の制作に専念しようと思っていたタイミングでもあり、それが横浜で新しい場所だったことも良かったですね。
さっき話しに出たスタッフワークも、ほとんど打ち合わせも出来ない中で、小屋入りしてからその場で対応してくださって、5回やる中で作品も緻密になっていきました。
そういったやりやすい環境を作ってもらえたことは感謝しています。
--こちらも近郊以外から応募があったことは、企画を進めていく上で励みになりました。
それでは2回目に参加されたflep
funce!さん、お願いします。
いづみ:私たちは2回目ということで、N.N.N.が続いていけばいいなという勝手な思いがあり、そういうこともモチベーションに繋がりました。KENTARO!!さんのN.N.N.に対する考えに触れたことで、ダンスに収まらない表現の可能性を探っていけたと思います。
あと、このときは長い作品を作ったことがあまりなく、そこで考えたり実験したり出来たことが、flep funce!のその後の作品づくりにも大きく影響しました。
大園:去年ここでやるまで(長い作品は作っていなかった)ってことですか?
マノ:flep funce!の名前では新宿眼科画廊でやった単独公演(※3)で1時間位のだけですね。
いづみ:それからは、あまり長い作品のことに目を向けられていなくて、無理やりやろうとはしていなかったし。その頃(第1回目の)N.N.N.の企画を知って興味を持ったのですが、これは募集が終わった後だったので、次があるといいねって。それで2回目に参加することになって、そこから活動も広くなりました。もっと長い作品を作りたいなとか。あと、劇場で稽古が出来たり、稽古場を用意して頂いたことは、ものすごくありがたかったです。
マノ:れいなが言ったことは私も同じように思っていて、あとは公演回数が5回あったことはすごくよかったです。(flep funce!では)5回同じ演目をしたことがなかったし。単独公演ではないので、私たちのことを全く知らない人にも見てもらえたこともよかったです。劇場でやらせてもらったことで劇場じゃないところでも劇場化できる(観てもらう体制を整える)ことが見えたし、今度はこんなことがしたいとかも出てきて。
とにかく、スタッフさんがきっちり枠を作ってくださった環境は、安心して参加できる環境ですごく贅沢だなと思いました。
何でもやっていいN.N.N.
--その中でこちら(企画側)は「出てきたものを出す」という姿勢ではありました。そこで監修という立場におりましたKENTARO!!さんとはどのような話をされたのかや、作品制作に関してどのようなアドバイスをされたのかなど伺いたいです。
マノ:私たちは勝手に「KENTARO!!さんはどう思っているのかな?」とかドキドキしたくらいで。
いづみ:アドバイスとかあったかな?
大園:具体的なものはなかったと思います。
木村:雑談程度に「(作品に)こういう傾向があるよね」とか「この人の体はこうだよね」とか。
大園:僕は具体的な内容についてではなく、作品をどう成立させるかにおいてはありました。KENTARO!!さんから具体的なアドバイスがあればとても助けになるとは思うのですが、そこに甘えないで自分がどういう作品を作りたいのかを考える、そういう自分で考える機会は重要だなと思います。
--稽古を何度も見てアドバイスしていくようなスタイルではなかったですものね。
いづみ:いい距離でした。だから、スタッフ見せのときは緊張したよね。
マノ:ね!そんな感じだったので、 N.N.N.はこだわらずにできそうだなっていう印象でした。受け皿が大きいというか、これを作って大丈夫なんだっていう。当たり前だけど、作り手が好きに作っていいんだなって。
木村:1回目はバラエティー豊かでしたよね(笑)
--そうですね(笑)本当にバラバラで。ケチャップ飲んだり、ガンガン踊ったり、電飾あったり。
いづみ:2回目はまとまってた?
--「わりと」ですけれど。
マノ:公演を観に来た知り合いも色々観られて良かったっていうことは言ってました。3つとも違う雰囲気があったって。
大園:会場の飾り付けだとか、休憩時間にKENTARO!!さんが何かパフォーマンスのようなことをしたりだとか(※4)、そういうパッケージングはひとつの特色かなとは思います。
マノ:そういう色んな要素や、選考はあるけどコンペティションでもないし、不思議な感じを作ってる気がする。
大園:そうですね。そういうところでは、単純に他のコンペやショーケースとは比較は出来ないかなと思います。
--ショーケースだと品定めのような印象を抱いてしまうこともあるかと思うのですが、そうではなくて、今挙げられていたことやみなさんの作品が楽しめる公演にしてくれたという印象があります。
継続した活動に向けて
マノ:話は戻っちゃうんですけど、終わった後に色々な感想聞けたり、話が聞けたりしたのは良かったです。場所だけの提供で公演が終わったら終わりではなく、続きを考えられるものになったなぁと。
--言ってしまえば、3人集めれば応募は出来てしまうところがあるので、継続というところでもっと出来るところがあると思っていますし、それは課題として受け止めています。私もその後の活動を見たいと思っているので。
マノ:企画の継続だと話に出ていた「N.N.N.と言えばこうです!」というようなことは、これから継続される中で肉付けされていき、それで企画の存在が強くなっていったらいいなぁとは思います。
大園:グループの活動は大前提だけど、僕らが頑張るところではあるよね。
--まずこの企画で一緒に公演を作ることをして、関係を築きたいですね。その後は、うち(STスポット)の規模だから、いいステップアップになってもらえるよう。
話は変わってしまうのですが、不思議なことに今日の参加者は応募作品が未完成だったグループですね。
一同:笑
いづみ:とりあえず出そうと。なんか匂わせて、ここからまだありますよって。
大園:出さないと何も始まらないですからね。(出すことで)可能性が出てくるし。
--でも、やっぱり力というのは感じて、応募映像→スタッフ見せ→ゲネ→本番で、ビックリするくらいどんどん面白くなっていくんですよね。こちらとしては、もっとそういうところをアピールすべきだったのは大きな反省点ですね。
(中略)
--それでは、このあたりでまとめに行きたいかなと思います。
木村:どうまとめるんですか?(※上の中略の部分は長い雑談でした)
一同:笑
--では、言い残したことなどありましたら!
マノ:単純にこういう今日みたいな場があるのは嬉しいですよね。
いづみ:忘れないでかまってもらえて。
--それはもちろんですよ!何か面白いことをやりましょう!
木村:他のみなさんは作り方やテクニックなど自分とは全く違うものを持っていたので、振り付けてもらうとかやりたいですよね。
--それは、考えていきたいですね。0から1つ公演を作る。まずは秋の若手企画(※3)で可能性を考えたいですが、これはこの後に話し合いましょう。こうして関係が生まれて、そこから新しい展開が生まれていくのはとても幸せなことです。こういった企画を継続していくことで、その繋がりが大きくなり、可能性が広げる方法の1つになっていけるよう、こちらも頑張りたいです。
皆様、本日はお集まり頂き本当にありがとうございました。
この他にも、話題はそれぞれの地域における同世代の活動状況(※4)や思い出話(※5)から、次の活動の展開まで及び、座談会は2時間に及びました。
flep funce!、かえるPは今夏〜秋に開催されるSTスポット開館25周年記念事業『ST25D』にて公演がございますので、みなさまどうぞご注目ください。
また、既に公開されております公演前インタビュー(第1回、第2回)も合わせてお読み頂ければ幸いです。
【プロフィール】
大園康司:かえるP
桜美林大学を卒業した、大園康司と橋本規靖が主宰するダンスユニット。ダンスの根源"を探ることをテーマに、普段の生活に根ざしたことにこそダンスの身体の在り様があるのではないかと考え、日々作品創りをしている。時として共同創作も。
第一回コンドルズ振付コンペディションにてグランプリ受賞。主に横浜界隈で活動中。また、大園・橋本それぞれ外部でもダンサー・振付家として活動を行っている。
次回『老化のメカニズム』をSTスポットにて公演予定。
木村悠介
1985年生まれ。舞台芸術を中心に、近年はインスタレーションやメディア・パフォーマンスなど様々な作品形態で活動を展開。シリアスなテーマとそれに反したくだらないユーモアを併せ持つ作品性が特徴。またキャシー名義でドラァグクィーンとしてクラブシーンでも活動。
2008年、京都造形芸術大学 映像・舞台芸術学科 舞台芸術コース卒。2012年、情報科学芸術大学院大学(IAMAS)メディア表現研究科修了。修士(メディア表現)。2012年より渡独。
flep funce!=flow step fun dance=(フレップ
ファンス!)
いづみれいなとマノリツコにより2010年結成。ダンスをダンスの場だけのものにしないをモットーに、日々から 得たヒントを元に動きを発掘。リアリティーからギリギリ離れた位置にある作風が特徴。ダンスなのかそうじゃないのか、独自の世界観とリズムをもつパフォーマンスを繰り広げる。
自主公演のほか、音楽ライブイベントでのパフォーマンス参加や、バンド「ショピン」の曲へ振付提供・PV出演、音楽PVアニメーション(手前みそのうた)内の振付、ダンス映画祭にてビデオダンス作品(nai-mono-gatari)上映、ワークショップ開催など、活動は多岐に渡る。N.N.Nへは第2回目開催の際参加し「アチラソチラコチラ」を発表。
次回『「こんなトコロニ」〜明日、冷静になったら考えよう〜』をSTスポットにて公演予定。
http://flepfunce.blog6.fc2.com/
【今後の予定】
◇大園康司
冨士山アネット『八』TOUR2012
6/1(金) @福岡イムズホール(福岡演劇フェスティバル参加)
7/14(土) - 15(日) @伊丹AIHALL(break a leg参加)
◇橋本規靖
StandardGossip pre.『Close to you .vol2』
5/2(水) @nitehi works
[Artist]Oii/oikawa
kouichi/fabrica
※fabricaにダンサーとして参加
◇flep funce!
nononootoshimono企画「Sally garden~鳥笛市場~」
6/16(土) - 17(日)@ロバハウス
□10:00 ワークショップ&カフェ スタート
□16:15 ライブ
スタート
(flep funce!はワークショップとパフォーマンス(16日)を行います。)
詳細→http://www.nononootoshimono.com/
◇マノリツコ(間野律子)
東京デスロック
「モラトリアム」出演
5/19(土) - 20(日)@STスポット
詳細→ http://deathlock.specters.net/
木ノ下歌舞伎
京都×横浜プロジェクト2012「義経千本桜」出演
7/7(土) - 8(日)@京都芸術劇場 春秋座
7/20(金) - 21(土)@横浜にぎわい座
詳細→http://kinoshita-kabuki.org/
注釈
※1 2006年の木ノ下歌舞伎(主宰/木ノ下裕一)の立ち上げから2009年まで企画員兼制作として参加など。
※2 2010/06/06 プカポコバザール
※3 休憩時にちょっとしたトークとパフォーマンス(その日見た不思議な歩き方をしていたの人のモノマネ)を行っていた。
※4 東京近郊における新人対象の公募企画、劇場外での公演活動、関西におけるダンス企画などが話題にのぼり、そこから、グループ(カンパニー)での活動や稽古場の確保、学校を介す場合と介さない場合の活動などに発展していきました。それぞれ背景が異なるので、そういった状況など詳しく伺うことが出来たのですが、今回は都合により割愛させていただきました。