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【共催】岡崎藝術座『イスラ! イスラ! イスラ!』

2016年2月3日(水)~8日(月)
はじめに|
ペルー生まれ、パラグアイ、アメリカ、日本(川崎)育ち。沖縄、北海道、リマ、ネバダ、所どころに暮らす親族。多文化・多言語に囲まれた環境にいた劇作家・演出家の神里雄大は、日本に暮らす人々の多様な差異や背景と、移民・移動して生きていく人々の姿に焦点をあて、創作を続けています。
 本作『イスラ! イスラ! イスラ!』では、さまざまな文化や言語や政治などが外部から持ち込まれ、そのなかで衝突、融合、変貌していく架空の島々(Isla。スペイン語)というイメージを核とし、モチーフを集めました。なかでも、高知出身の2人ーージョン万次郎 (1827-1898)の生涯や、戦後大流行したマンガ「冒険ダン吉」のモデルとも噂された実業家・森小弁 (1869-1945) の外への関心を持ち続けた姿勢は、他者への無理解や排他的な雰囲気の強い現代日本にとって重要な意味を持ち、近年神里が考察している「他者との共生」という問題に繋がっています。世界に目を向ければ、街に移民が溢れ、国籍や国境の境界線を越えた共生の可能性が問われています。
「島」というモチーフと共生への追求によって、いま岡崎藝術座はどんな世界を提示するのでしょうか。
ご期待ください。


演出ノート|
新作は、架空の島々が舞台になっていて、そこには、さまざまな野心や思惑を持ってやってくるものたちや、穏やかに生活したいとするひとたちなどがなかば強制的に共生している。
そういうイメージでつくる。
けれどもその主役は人間ではなく、鳥とか動物の鳴き声とか知らないけどワニとか、あるいは島全体が話者になる、というアイデアがあって、それを採用しようと思っている。
人間ではないものを通じて人間社会を考える、というのは、それを表現する俳優はけっこうたいへんだと思うし、台本を作るぼくも苦しそう、というかすでに苦戦しているのだけど、なんでそんなアイデアを採用しようと思ったかというと、昨今の世の中どうにも主義・主張・正義もしくは他者への攻撃があふれすぎているように思えて、そしてどれもこれも誰もかれも正当な言葉のぶんまわしのようにも感じて、もうほとほとぼくは疲れたので、離れ小島の風が織りなすフィクションの中でゆっくりしたい。。。
という甘えはまだ言わないようにして、とにかく、正義とか秩序とか声の大きさとかそういうものから遠ざかっても人間社会のやりかたはけっこうあるのではないかしらという見地を、ささやかに表現してみたいと思っています。
人間ではない存在が持つ、かもしれないロジックや常識をイメージしながら、他者が混ざり合う社会の可能性を考える。
ところで今作は、前作『+51 アビアシオン, サンボルハ』から継続するところがあって、その作中に登場する北海道在住の実業家・神内良一氏が憧れたという、戦前の流行漫画「冒険ダン吉」や、そのモデルとされることもあった(実際は違うらしい)森小弁という明治の実業家を足跡を追うところから、取材が始まりました。「人々の移動と他者の集まる社会」というテーマで串刺しされる、前作「+51 アビアシオン, サンボルハ」の兄弟的な作品になると考えています。
森小弁やジョン万次郎も立ち寄った小笠原諸島父島にも2週間滞在し、高知ではジョン万次郎の資料館見学や研究家とも懇談し、関係ないですが、いまはグアテマラに短期語学留学中で、よくわからないものがミックスされ混沌とした作品になると思います。(2015 年7月末 神里雄大)


―以下、戯曲より抜粋―
この川におまえが落としたのは、金の人間か、それとも銀の人間か。固有種か、それとも外来種か。
おまえが怖い、いつかおまえがわたしの皮を剥ぎ、競売にかけ、肉を捨て、目玉をアクセサリーにしてしまうかもしれない。わたしの家族を殺して焼いてしまうかもしれない。永遠の川底で、終わらないディスカッションを始め、言語を理解せず、やさしい顔をして、過去の自分のふがいなさにいつまでもしがみつき、わたしの乳首をちょん切り、愛撫をかまし、役人風のいでたちでにやにや笑うかもしれない。終わらないごっこ遊び、濡れた幕。スキューバダイバーが酸素を吸いながらそのさまを見ている。おまえがわたしを好きにするのを。とんちんかんな言葉をつかって、とんちんかんな腕の動きをするのを。

ワニはたくさんしゃべって疲れたのか、陸にあがってきたので、わたしはたくさんのエネルギーを集めて、自分で建てた小屋まで走って逃げた。ワニはのそのそ後からついてきた。午後の太陽が赤くて厳しい。そんなときにあいつらはやってきたのだ。


【ツアースケジュール】
熊本公演|2015年12月3日(木)~4日(金) @ 早川倉庫
京都公演|2015年12月17日(木)~20日(日) @ 京都芸術センター
東京公演|2016年1月9日(土)~17日(日) @ 早稲田小劇場どらま館
横浜公演|2016年2月3日(水)~8日(月) @ ST スポット [TPAMショーケース参加作品]


岡崎藝術座 
2003年、演出家・作家の神里雄大の演出作品を上演する目的で結成。南米の照りつけるような太陽のイメージや色彩・言語感覚、川崎ニュータウンの無機質さが混在する作品を創作し、独自の存在感を持つ。2006年『しっぽをつかまれた欲望』で第7回利賀演出家コンクール最優秀賞演出家賞受賞。フェスティバル/トーキョー(2010-2012,東京)やTaipei Arts Festival2012(2012,台湾)など国内外のフェスティバルで公演を行なう。『ヘアカットさん』(2009)、『(飲めない人のための)ブラックコーヒー(2013)が 岸田國士戯曲賞最終候補にノミネートされた。
☆岡崎藝術座HP>> http://okazaki-art-theatre.com/
☆『イスラ! イスラ! イスラ!』特設ページ http://isla-isla-isla.strikingly.com/


[作・演出]神里雄大

[出演]稲継美保、 嶋崎朋子、 武谷公雄、 松村翔子、 和田華子

[スタッフ]
美術:稲田美智子/照明:筆谷亮也/音響:和田匡史
技術監督:寅川英司/技術助手:河野千鶴
舞台監督:渡部景介(熊本・京都公演)、 横川奈保子(東京・横浜公演)
記録映像:ワタナベカズキ/写真撮影:富貴塚悠太/宣伝美術:古屋貴広[Werkbund]
制作:中村茜、 内山幸子、 川崎陽子/制作インターン:穂坂拓杜
製作・主催:岡崎藝術座、プリコグ
共催:京都芸術センター(京都公演)、早稲田大学(東京公演)、STスポット(横浜公演)
助成:公益財団法人セゾン文化財団、芸術文化振興基金、アーツカウンシル東京[公益財団法人東京都歴史文化財団] (東京公演)、ACY アーツコミッション・ヨコハマ(横浜公演)
協力:プリッシマ/制作協力:古殿万利子[劇団きらら](熊本公演)
企画制作:プリコグ


【横浜公演スケジュール】
■2016年2月3日(水)~8日(月) [TPAMショーケース参加作品]
2/3水 20:00
2/4木 20:00
2/5金 20:00
2/6土 13:00☆/20:00
2/7日 13:00☆/20:00
2/8月 13:00☆/18:00
※☆は『+51 アビアシオン, サンボルハ』の上演となります(詳細はURL先をご参照ください)。
※受付開始は開演の40分前、開場は30分前


【チケット】発売中
横浜公演:前売一般2800円、学生2000円(当日券は+500円)/ペアチケット5200円
※ペアチケットは前売のみ取扱い
※TPAMパスをお持ちの方は2500円(前売・当日共)でご覧いただけます。
 詳しくはTPAMウェブサイトをご覧ください。http://www.tpam.or.jp

【チケット取扱】
プリコグ(WEB・Peatix) http://precog-jp.net/tickets/
岡崎藝術座(WEB・シバイエンジン) http://okazaki-art-theatre.com/

【お問い合わせ】
プリコグ 03-6825-1223(平日10:00~19:00 /土日祝休)
info@precog-jp.net http://precog-jp.net