劇場
「ラボ20#25」参加アーティスト決定
2026年8月31日
28組にご応募いただき、オーディションを経て、以下の4名に「ラボ20#25」にご参加いただくこととなりました。
今井あこ
佐山和泉
中川鈴音
安永ひより
各アーティストのプロフィールと、キュレーター神村恵による講評を掲載いたします。
「ラボ20#25」は
2026年12月12(土)に中間発表、
2027年2月26日(金)~2月28日(日)に最終発表と続きます。
今後の展開にも引き続きご注目いただけたら幸いです!
【参加アーティスト プロフィール】
今井あこ(いまい あこ)

小学二年生よりモダンダンスを始める。稲川千鶴、酒井幸菜、Nomade~s、大橋可也&ダンサーズ、オフィスマウンテンなどの作品に出演。ヨコハマダンスコレクション2022コンペティションⅡファイナリスト。2024年3月に初めての自主公演『レンズ雲のゆくえ』をS Tスポットにて開催。ラボ20#24にオフィスマウンテンメンバーとして参加。身体に刻まれた記憶を呼び起こすことでダンスが生まれたり、日常生活における身振りからダンスが生まれる瞬間を探している。現在は人形劇団の制作の仕事をしており、ダンスと仕事を両立していく道を模索している。
撮影:湯田冴
佐山和泉(さやま いずみ)

北海道森町生まれ、東京都出身。2007年頃より劇団東京デスロック及び劇団青年団に俳優として所属。以降、国内外での公演、海外共同製作事業、地域滞在プロジェクトやWS等、多様な創作現場に参加。2025年よりフリー、今回がダンス作品への初トライとなる。主な参加作に『再生』『가모메 カルメギ』(東京デスロック)、『革命日記』(青年団)、『義経千本桜』(木ノ下歌舞伎)、『父の死と夜ノ森』(屋根裏ハイツ)、『何時までも果てしなく続く冒険』(ヌトミック)、『町の形見』(青春五月党)等。
撮影:八重
中川鈴音(なかがわ りおん)

1999年生まれ、滋賀県出身。お茶の水女子大学 芸術・表現行動学科 舞踊教育学コース卒業。
近年は出演、個人での活動のほか、舞台衣裳作家平野みなみとのユニット[Humpit](豊岡演劇祭2025フリンジ『Swallow a room』等)や、北区にTheater, Sweet Theaterと名付けた上演空間を構えるダンスカンパニー[Reconu](『1999』『アーグルトンの家』等)の活動も精力的に行なっている。また、保育園や小中学校、福祉施設で一緒に踊ることも継続ごとであり、関心ごとの一つ。
撮影:佐伯春樺
安永ひより(やすなが ひより)

2001年茨城県出身。筑波大学体育専門学群卒業。
ヨコハマダンスコレクション2022 コンペティションⅡにてアーキタンツ・アーティスト・サポート賞受賞。国内ダンス留学@神戸9期参加、『橋の上をおよぐ』を上演。『山のなかで』『まちのいちぶ1-14-』などを発表。劇場に限らず、飲食店や街中でもパフォーマンスを行う。熊谷拓明、中村蓉、伊藤キム、西脇言美などの振付作品に出演。
ある街、駅までの道、電車の中、私の家。
ある場所に私の体がある、けれど私はそこにいないと感じるとき作品をつくりたくなる。
撮影:すながじゅり
【キュレーター 神村恵によるオーディション講評】
個人的にここ数年、あまり積極的に劇場公演を見に行っていません。創作現場や稽古の方が、生々しく何かが生まれているという手応えがあり、そちらの方により関心を注いできました。なので、オーディションでのたくさんの上演を、自分がどのように受け止められるのか不安な部分もありました。でも結果として、自分の身体に吸い込むつもりで、全ての発表を興味深く見ました。それぞれの上演後、参加者の話もじっくり聞くことができました。どうやってダンスを始めたのか、どうやって活動の場を確保しているのか、何を課題に感じているのかなどを聞けて、こういう表現活動の環境を今後どう耕していけばいいのかを考える手掛かりになりました。
今回の応募全体としては、女性と男性の比率は4:1くらいで、大半がソロ作品であり、デュオやグループが何組かという割合でした。演劇や舞踏、モダンダンス、バレエ、一人ストリートで、など、様々なルーツからダンスに取り組んでいる方達がいる雑多さに、私の知っているダンスってこういうものだという思いを新たにしました。
作品のテーマとしては、自身の制御できない内面、他者への想像、時間感覚、形のないものの視覚化、人の間に働く暴力性など、多岐に渡っていました。私が特に興味を引かれたのは、個人的かつ普遍的な問題やテーマを扱っているが、身体を通常とは異なる状態に置き、身体に何かを聞いてみるという仕方でしか、それを扱えない領域を含んでいるように見えるものでした。
選考は、いくつかの観点からおこないました。半年かけてやり取りしながら作品上演まで持っていくので、コミュニケーションをうまく取れそうかどうか、「ラボ20」に参加することがその人の活動の中で必要な段階かどうか、今回の上演からその先を見てみたいと思ったかどうかなどです。
今回選んだ4名の方はたまたま全て女性でソロ作品ですが、作品のスタイルや、踊ることとの距離感はそれぞれ異なります。創作の過程で参加者の間でも共鳴や反作用が起こって、それぞれ重さのある作品に結実することを期待しています。
そして改めて、応募していただいた皆様、パフォーマンスを見せていただきありがとうございました。選んだ方以外でも、興味を引かれた作品はたくさんありました。こういう選考というのは、単純にタイミングや相性なども大きく作用します。ぜひ今後も淡々と活動を続けていってください。皆さんの上演を見て、私ももっと“踊る”ということに取り組まなくてはと思いました。
今井あこ
何かに引っかかってほどこうとしている間に別の場所に投げ出されて、というような変な粘りと諦めの両⽅ある動きでした。後半に⾏くにつれて発話が独り⾔っぽく聞こえてきてしまうので、発話の仕⽅を変えるとか、⽂字として⽰すとか、何らかの演出を加えることによって⾔葉と⾝体との距離感を変えると、スケールが変わってより⾵景として⾒えてくるのかなと思いました。閉じたまま無理やり外部に接触しようとするようなこういう種類のダンスやテクストに、どういう展開の可能性があるのか、⾒てみたいと思いました。
佐山和泉
⼈を救ったのか救っていないのか、何とも⾔い切れない昔の記憶や感触が、佐⼭さんの⾔葉や⾝体を通して⽴ち上がるのを⾒られました。演劇作品としてある程度すでに完成されていると思いましたが、ここにさらにどう“わからなさ“が⽴ち上がってくるのか、⾒てみたいと思いました。演劇はじめ舞台作品というものには、演じるべき内容や役がまず存在しているという前提がありますが、それがそもそもないかもしれないという地点を通過することが、踊ることにつながるのかなと思いました。
中川鈴音
終始よくわからないが何らかの確信があるように⾒えるパフォーマンスでした。主語や⽬的語が曖昧で、⾏為だけがあるという状態を、パフォーマンスからも応募書類の⽂章からも感じました。それは中川さんの良さでもあり、開拓すべき部分でもあるように思います。タイトルにあるように、「恵まれたもの」はそのようなことを意識しないで済むということの表れであるのかもしれない。どう恵まれているのか?誰に対して後ろめたさや加害意識を持っているのか?もしかしたら、あえて“何ものとして”や“誰に対して“ではなく、”どのように”を精緻に観察して作っていけば、⾒たことがあるようでないようなダンスが出てくるのではと思いました。
安永ひより
空間にモノや光をどう配置し、それらとどう⾃分を関係づけたいかが明確に現れていると感じました。
光の当て⽅や⾝体との関係のさせ⽅によって、街の⾵景に⾒えたり、⼩さい感覚を拡⼤しているように⾒えたり、スケールが変化するのもいいと思いました。空間への驚きに対し、⾃分の⾝体に対する驚きが、あまり起こっていないように思いました。私たちが何かを「⾒る」とき、⾝体の中や、思考や感覚の中でも何らかの変化が起こっています。⾃分の外にある何かを⾒ているときに同時に⾃分の内側を“⾒る”というのはどういうことなのかを探れると、ご⾃⾝で課題として挙げられている「ここにいる」という感覚を探ることにつながってくるのではと思います。

