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STミーツ#04 TeXi’s『 ファジー「ours」』テヅカアヤノ インタビュー|2024年8月

2024年8月13日(火)14:54インタビュー

STスポットが若手のアーティストにフォーカスしてお届けするインタビューシリーズ「STミーツ」。
第4回目は「TeXi’s(てぃっしゅ)」さんの登場です!
回遊型演劇や、会場を葬儀場に見立てた上演など、演劇に引かれた境界線を自在に横断してみせる手法が注目の若手劇団「TeXi’s」。STスポットでは昨年、オープンスタジオとして創作過程を公開されていましたが、公演は今回が初めてとなります。

『ours』は、男女二元論が生み出してしまっている「加害性」について考える1年間のプロジェクト『ファジー』の2作目にあたります。1作目『theirs』から、視野を広げてリクリエーションされる本作は、一体どのように変化しているのでしょうか?

「TeXi’s」主宰で脚本と演出を務める、テヅカアヤノさんにインタビューしました。


『oh so shake it!』(2024年/北とぴあカナリアホール)撮影:金子愛帆

Q1:『ファジー』は、男女二元論が生み出してしまっている「加害性」について考える1年間のプロジェクトです。今回、ひとつのテーマを掲げて作品創作にじっくり取り組もうと思われたのはなぜでしょうか?
また、テーマを据えた通年での創作を行ってみて、現時点での感触を教えてください。

「加害性」はこれまでのTeXi’sの作品でも取り扱っていたテーマではあったのですが、どうにも伝え切ることができず、俳優自身の見た目により”男女の話”として捉えられてしまうことが多くありました。もちろん、感想は観ていただいた方の自由ですし、伝えきれないことに力不足を感じています。
けれど、自分や周囲の人たちが二元論的価値観での言動による辛さを感じていることを目の当たりにしたとき、きちんとTeXi’sとしての創作のスタンスを示すことは重要なのではないかと考え、プロジェクトを立ち上げました。
1年間という一見、長期に思えるプロジェクトですが時間の無情さを感じます。これだけ根深い二元論に1年間で立ち向かえるとははなから思ってはいませんでしたが、あまりにも深い絶望があるなということを再認識した段階です。
観ていただいた方との対話も重要だと考えていますが、なかなかそのシステムを作ることができず悩んでいます。

Q2:今回、なぜ「加害性」を創作のテーマに据えたのでしょうか?
また、『ファジー』という演劇プロジェクトを通して「加害性」と向き合っていく中で、見えてきた課題や発見があれば教えてください。

上記にもあるように、「加害性」はこれまでも取り扱ってきたテーマです。
さらに、パフォーマーが存在する創作、作品は加害性とは切っても切り離せない関係にあるテーマだと考えています。より、TeXi’sという団体がなにを目的に創作を行うかを明確化させるためにもテーマとして掲げました。
見えてきた課題と発見としては、加害性はどこまでも自己の中で完結させなければならないことだと思いました。自己責任であるというより、自分が持つ加害性は誰に向かっていて、どこを脅かしているかを考えるタイミングを作ることが重要なのではないかと思います。安全に、自身が脅かされることなく加害性と向き合う時間をつくることを課題としています。

『theirs』(2024年/アトリエ春風舎)撮影:大橋絵莉花

Q3:「男性が背負っている加害性、その先にある普遍的な加害性」をテーマとしていた1作目『theirs』から、今作『ours』では、「女性も背負っている加害性を表面化し、加害を生み出してしまっている社会構造を描く」と謳われています。シリーズとして1作目から引き継がれている点はありますか?
また、1作目の上演を終えたことや、キャストが変わったことで作品の作り方になにか変化はありましたか?

大きな時間の流れ方は変わってないです。細かいマイナーチェンジがたくさんある、という印象です。クリエーションメンバーが変わると創り方は変わってきます。
TeXi’sとしてメソッドがあった方がいいのかなと悩んでいた時期もありますが、せっかくこのメンバーがいるなら、このメンバーでしかできない創り方を目指してみたいと最近は考えています。
大きな変化としては、今作『ours』のメンバー全員が1作目の『theirs』を観てくださったこともあり、稽古初期から作品とプロジェクトが向かいたい先の共通認識ができていました。なので、『theirs』よりも自分たちが生活している社会の話よりも、戯曲について話す時間の方が多く取れたという点だと思います。

『ours』稽古風景

Q4:TeXi’s の演劇は既存の制度にとらわれない自由な発想で作られているのが特徴だと思いますが、テヅカさんはどういったところから作品のアイデア、インスピレーションを受けることが多いですか?

実はあまり演劇を知っておらず、、、なにが既存なのかを把握していない結果だと思います。
最近はVtuberにハマっています。明るくはないですが、観る楽しみとしてファッションショーをみたりもします。
研鑽を積んだ身体や思考に触れることも好きなのでスポーツをみたり、ラップバトルみたり、本を読んだり、、、どれも詳しくはないですが、多くの人が楽しんでいるであろうエンターテイメントに触れているのかなと思います。
芸術の分野は常に新しさや”自由”という価値観に更新が必要なのだろうなとぼんやり思っていて、自由な発想を自分が特徴とすることは出来ないことなのでわからないです……。


【プロフィール】
テヅカアヤノ(てづか・あやの)
2021年に演劇・ダンス・ファッションショーなどシームレスな創作活動を展開するTeXi’s(読み:てぃっしゅ)を設立。脚本・演出・衣装プラン等を手掛ける。これまでの上演作品に『G+(CHON)=』(2021年)、『水に満ちたサバクでトンネルをつくる』(2022年)、『Aventure』(2022年)、『夢のナカのもくもく』(2023年)。

【公演情報】
TeXi’s 『ファジー「ours」』
2024年8月21日(水)-8月25日(日)
詳細:https://stspot.jp/schedule/?p=11986

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