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【特集】20周年特別号寄稿文:岡崎松恵(STスポット元館長)|2008年7月

2008年7月08日(火)16:19アーカイブ

劇場は時代によって環境も変われば、役割も変わる。そして、関わる人によって変化するものである。
しかし、STスポットにはひとつだけ、変わらないものがある。それは、アーティストと劇場とが垣根がなく一緒になって創る姿勢である。

創設から15年間は、まさに一緒に鍬を携えともに田畑を耕すといった運営参加型の制作スタイルだった。
それは歴代のスタッフ達がSTスポットで活動した経験を持つアーティスト、または予備軍であったこともその理由のひとつだが、それ以上にSTスポットは、作品を発表する場所だけではなく、みんながよく集い話し合う場所でもあった。
雑談からいろいろなアイデアが生まれて企画が立ち上がり、スタッフに加わってもらった。
劇団の演出家で、公募の演劇フェスティバルの実行委員長を努めた田中啓介さん、STで旗揚げ公演を行った振付家で、ダンスシリーズの公募企画「ラボ20」を発案し制作を手がけた山田うんさん。
そのほかに、岡田利規さん、手塚夏子さん、吉福敦子さんなどが運営に参加してくれたことで、アーティストの舞台芸術に関する問題意識やクリエイティブなエネルギーをSTスポットの活動全般に反映させることが出来た。
彼らの本業はアーティストであり、劇場のスタッフとしては数年間のおつきあいであったが、STスポットの基本的な姿勢を語るうえで、忘れることのできない、かけがえのない楽しい時間であった。
2004年1月からは田中啓介さん、加藤弓奈さんが館長を務め、ここ5年は「アーティストがいる劇場」と銘打ち、それまでの間口の広いプログラムから、特定のアーティストを継続的にサポートする「契約アーティスト」という事業を始め、創造型劇場としてのSTスポットを打ち出した。
この5年の間に、STゆかりのアーティストたちの活動が様々な分野で数多く開花した感があるが、こうしたスタッフの地道な努力もあったことをここに記しておきたい。
今年、STスポットは大平勝弘さんと佐藤泰紀さんという新体制になったが、次はどのような時代が訪れるのだろうか。20年一区切り、新しいSTスポット像を今から楽しみにしたい。

最後に。20年間、多くの方々に支えられました。ありがとうございました。
これからの10年、20年も、さらなるご支援を切にお願いいたします。


筆者プロフィール
岡崎 松恵(おかざきまつえ)
1987年STスポットの開館より2004年1月まで館長、2006年3月までBankART 1929の館長を務める。
2008年3月舞台芸術の企画制作を手がける制作オフィス[Zebra]を立ち上げ、「Offsite Dance Project」を開始。NPO法人STスポット横浜理事。
http://www.offsite-dance.jp

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