『部屋(壁・床・天井)と演劇』 協力
『部屋と演劇』では、劇場をはじめ演劇の上演が行われる非日常的な空間を「部屋」という日常的なスケールによって捉えなおし、上演と空間との関わりについて模索してきました。今回は「部屋」を「壁」「床」「天井」という三つの平面に分割することからはじめます。中村、野村、福井それぞれが異なる平面について考えたことを持ち寄って短い発表をおこない、その総体としてあらわれる「部屋」を見つめることから「部屋と演劇」を再考します。
中村(壁):この前はじめてプロセニアム・アーチの劇場で演出をした。それまで僕は俳優と「床」に対して演出を凝らしているつもりだったが、「壁」と劇空間がいつもより遠く離れたことで、かなりいろんなことを「壁」に頼っていたと気がついた。
生活空間において「壁」は、いの一番に人の目に入るところだ。だから見るものの視線をかなり規定する。「壁」さえあれば、その内側にいる人の視覚をつくることは容易い。
「壁」のその騙し屋っぷりに頼っていたところがある。騙されないように考えるところからはじめたい。
野村(天井):劇場の客席に座っているとき、気づくと天井を見上げていることがあります。あ、いま天井見てる、という感じで、いつも後から気づくのですが、これがなんとなく好きだったりします。部屋における壁と床を括弧に入れて、天井だけを取り出し具体的に考えてみようとするとき、この「遅れて気がつく」というのが、キーワードになりそうだと思っています。とはいえ、まずは自分の部屋から始めて、そのほか思いつくいろいろな天井を見に行ってみようと思っています。
福井(床):自分にとって「空間」との関わりは、常に「床」のレベルから把握されるもので、これまでを振り返っても「床」のことばかり考えてきたような気がする。何もない「空間」を思い浮かべてみる。「壁」も「天井」もなく、そこには漠然とした広がりと奥行きだけがある。でもふと足元に目をやると、何らかの形をもった平面があることに気づく。自由な雰囲気と出来事の予感に満ちた「空間」は、この「床」なる平面の上に成り立っている。身体も言葉も想像も「床」の上に立たざるを得ない。だから今回は「床」と距離を取るために、演劇の重心を上げようとすることから考えはじめてみたいと思っている。
公演日程:2024年8月3日(土)15時(+ポストトーク)
※開場は開演の20分前です。
※車いすでご来場の場合は事前にお問合せください。
※上演時間:未定(終演後のトークも含めて16時半までには終了予定です)[7/9訂正]
※当日は記録撮影が入ります。
料金:2,000円(一律・当日精算)
予約:https://ssl.form-mailer.jp/fms/1eb236ac826946
クレジット:
演出:中村大地、野村眞人、福井裕孝
主催:部屋と演劇
企画協力:STスポット
プロフィール
部屋と演劇 :
普段演出家としてそれぞれ活動している中村大地(屋根裏ハイツ)、野村眞人(レトロニム)、福井裕孝の三人が、上演とそれが行われる空間との関わりについての関心や問題意識を共有するために、2019年6月からおよそ月一ペースで集まって話したり企画を実施したりしている。2023年8月『部屋と演劇』vol.1をSTスポットにて開催。
中村大地(なかむら・だいち):
劇作家、演出家。1991年東京都生まれ。東北大学文学部卒。在学中に劇団「屋根裏ハイツ」を旗揚げし、8年間仙台を拠点に活動。2018年より東京に在住。人が生き抜くために必要な「役立つ演劇」を志向する。『ここは出口ではない』で第2回人間座「田畑実戯曲賞」を受賞。「利賀演劇人コンクール2019」ではチェーホフ『桜の園』を上演し、観客賞受賞、優秀演出家賞一席となる。近年は小説の執筆など活動の幅を広げている。一般社団法人NOOKメンバー。2020年度ACY-U39アーティストフェローシップ。
https://yaneuraheights.net
野村眞人(のむら・まさと):
レトロニムの演出家。京都を拠点とする。演劇は引用可能な制度であると考え、ひとの精神のありようや経験をモチーフとする作品を劇場内外で制作している。こまばアゴラ演出家コンクール2018最終上演審査選出、利賀演劇人コンクール2018観客賞、優秀演出家賞受賞。大森靖子ファンクラブ会員。また、俳優として村川拓也演出作品や庭劇団ペニノなどに参加し、国内外での出演経験多数。
https://theatre-sokudo.jimdofree.com
福井裕孝(ふくい・ひろたか):
1996年京都生まれ。演出家。人・もの・空間の関係を演劇的な技法を用いて再編し、その場の状況を異なる複数のスケールやパースペクティブから再提示する。近作に『インテリア』(2018,2020)、『シアター・マテリアル』(2020)、『デスクトップ・シアター』(2021)など。下北ウェーブ2019選出。公益財団法人クマ財団クリエイター奨学金第二期生。ロームシアター京都×京都芸術センターU35創造支援プログラム“KIPPU”選出。2022年度よりTHEATRE E9 KYOTOアソシエイトアーティスト。
https://www.fukuihirotaka.com
問い合わせ:
部屋と演劇 heyatoengeki(a)gmail.com
※(a)を@に変換の上、ご送信ください