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他者の表現に触れるうれしさ~障害のある方の場合|2017年12月

2017年12月16日(土)12:17地域連携事業部

 STスポット横浜に拾ってもらって1年半。それまでは都内の大学で演劇に明け暮れ、その過程で、STスポットにも何度か訪れたことがあります。印象に残っている演目は、2011年のマームとジプシー『塩ふる世界。』。床に設置された蛍光灯の光で、STスポットの白い壁が照らされているのが、どうもきれいで、それを今でもはっきりと覚えています。

 さて、それから5年後の2016年に、私はSTスポット横浜の地域連携事業部で働くことになりました。地域連携事業部で行われている事業に関しては、理事長である小川が書いたものがあるので(http://stspot.jp/mag/commu-01/)割愛するとして、私は特に担当を持たず、全体的な事業の補佐を行っています。学校や福祉施設、まちなかのアートプロジェクトを見るなかで、何を思ったか。今回は障害のある方たちと出会うなかでのことを書こうと思います。

■障害の有無に関わらず、同じ時を旅する

 今年2月に障害者地域活動ホームみどり福祉ホームで行われた、上村なおかさんのワークショップでは、なおかさんと利用者の皆さんが、文字通り身体を寄せ合い、ゆるやかにダンスを踊っていました。これは、なにか発表物を作るという時間ではありません。なおかさんが誰かに触れて、またその人が違う人に触れる。ときには誰かの身体の真似をして、音楽に合わせて踊ってみたりする。みんな違うことを考えて、みんな違う動きをしている。それなのに、今同じ時間をともに旅していた。もちろん私も。このワークショップがこのまま劇場で行われたとしても、ずっと見続けられてしまうような、あの豊かな時間が忘れられません。

詳細はこちらの報告書にもあります。

■他者を尊重し、何かを作るということ

今年度から県内の福祉施設を対象に『地域における障害者の文化芸術体験活動支援事業』という活動に取り組んでいます。その一環で、作曲家の西井夕紀子さんと、精神障害のある方たちのバンド『ザ・PUSH』の練習を見学しました。練習場所は、反町にある『caféペガサス』。営業時間が終わると、バンドメンバーが集まります。 
リーダーはいませんが、皆が他人の意見をゆるやかに受け止め、なんとなく集団がまとまっていく雰囲気がとても心地よく、素敵な時間でした。バンドの皆さんは、基本的に誰かを否定するということがなく、個々を尊重しあっている様子でした。
こちらも、今後ザ・PUSHの皆さんと西井さんで楽しいことをしていく予定です。また実施が終わる頃、皆さんにご報告できたらと思います。

障害のある方たちと出会う時、私はいつも、自分や他人を許すことについて考えます。慌ただしい現代社会とは切り離された別の時間軸が、私たちのすぐ側にあるということがわかり、なぜか救われるような思いがします。また、私が考えもしなかったみずみずしい表現の連続に自身の世界が拡張されるような、そんな気持ちがします。

地域連携事業部は劇場で何かをすることはほとんどありません。それでも多くの人と出会うなかで、やはり全ての人のなかにその人だけの表現があるのだと強く感じます。その瞬間、あのとき劇場に反射する蛍光灯の光を見たときのように、私はいつも嬉しくなります。

(文:加納美海)

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