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【特集】20周年特別号寄稿文:森井健太郎 (横浜にぎわい座)|2008年7月

2008年7月08日(火)17:26アーカイブ

STスポット開館20周年、心よりお祝い申し上げます。16年前。初めてシタールの生演奏を聴いた会場・・・これがSTとの出会いだった。
何故か、開演と同時に右目のコンタクトが目の裏にズレ込み、演奏中は目に鈍痛を感じながらも、神秘的な音律と涙で拡散した照明に包まれ、「やっぱ、これがインドだよなぁ」と妙に納得して非日常空間を楽しんだ事が思い出される。

同業種の新人だった私にとって、その日以来、STは足繁く通わせていただく劇場になった。
当時は、演劇・ダンス・音楽に止まらず大衆芸能・映画等々の公演が多彩に開催されており、さながら「芸術の玉手箱」のような空間だという印象を持った。
もちろん、単純に色々な公演が行われる場ではなく、各々の先進性に加え、チラシのデザインやキャッチコピーなど「公演の見せ方」がとても丁寧で、そこからは運営責任者の「志」が伝わっていた。
横浜駅に近いとはいえ、奥まったビルの地下にひっそりと存在している小劇場であるにもかかわらず、その「発信力」と「影響力」は都心の大劇場に匹敵し、加えて多くの人材を輩出してきた事も特筆に価する。
まさに「山椒は小粒でもピリリと辛い」を地で行くような施設なのだ。

「どうしたら、この様な劇場運営ができるのだろう」・・・いつしかSTは、私にとって目標と言うよりも「教科書」的な存在になっていた。
実際に当時、自分が担当していた劇場の企画運営において、岡崎さんや坂本さんから色々と親身なアドバイスを頂き、そのノウハウを随分と転用させていただいた。
この場を借りて、両師匠に感謝申し上げたい。

その後、縁あって2年間ほどSTの運営に関わらせていただく時期を得たが、「施設経営」という観点から、細かいデータ分析を基に課題を見つけ出し、その解決に向け理事や職員の方々が一致団結して取り組む姿勢には、ただただ感服させられた。自分がどこまで役に立ったのかは甚だ疑問なところではあるが、ここでも沢山の事を学ばせていただいた。と、同時に出会った仲間たちとのネットワークは、その後の私にとって非常に大きな財産になっている。

このような経緯からも、今年度、私が勤務している「横浜にぎわい座」地下の小ホール(通称:「のげシャーレ」)を活用した事業をSTと協働開催できるのは、非常に感慨深いとともに、ここ数年は疎遠であったSTに期せずして「復学」の機会を与えられたようで至上の喜びでもある。


筆者プロフィール
森井健太郎(もりいけんたろう)
横浜にぎわい座副館長。2年間の青年海外協力隊活動を終え、1991年 (財)横浜市文化振興財団に入社。岩間市民プラザ事業担当を皮切りに、「横濱JAZZプロムナード」「横浜ダンスコレクション」「横浜アートライブ」などの事業運営を歴任。赤レンガ倉庫1号館開館準備担当を経て、2002年より横浜にぎわい座勤務。元STスポット理事。
※プロフィールは2008年7月時点のものです。

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