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外から学校に関わること|2018年2月

2018年2月13日(火)14:26地域連携事業部

STスポット横浜で学校案件(教育普及事業、横浜市芸術文化教育プラットフォーム事務局)を担って2年になります。ようやく、学校の名前をぱっと聞いて、およそどの区にある学校かがわかるようになってきました。毎年4校程度の学校へ、アーティストとともにちょっと変わった授業をしに行く企画・運営をしている他、横浜市芸術文化教育プラットフォーム事務局として、私たちSTスポット横浜を含め39のコーディネート団体とともに、横浜市内の学校(今年度は142校)でこうした授業、「学校プログラム」を実施する運営をしています。

■畑違いの立場から
私はこの種の仕事に携わって5年ほどになりますが、何かの芸術ジャンルを専門に勉強してきたわけでもなく、ホール・劇場のことや、アートマネジメントなんて一切触れてきませんでした。実は全く畑違いの、国際理解教育なんかを勉強していて、いわゆる途上国での教育開発などを研究するなかで、正規の学校教育以外の教育活動(ノンフォーマル教育)への興味を持ってきました。ノンフォーマル教育とは、学校教育が十分でない地域の教育を補完するものとして、地域における識字教育などに使われる用語ですが、現代の文脈では、「教育と言えば学校が行うもの」と認識されたなかで、その学校教育では限界がある部分について、学校教育以外での学習機会や体験内容に重要な役割がある、という考えを含むものとされます。(いつかもう少し詳しく書けると良いのですが…)そこに、今携わっている仕事の、私なりの興味・動機があります。
私たちは、さまざまなジャンルのアーティストと共に学校へ赴いて、それぞれのアーティストが面白くて仕方ない!と思っていることを子どもたちと一緒に体験できる場をつくっています。学校の授業時間に先生と共に実施しているので、学校教育内での活動ですが、持ち込んでいるのは学校の外のもの。それを意識しています。つまり、学校ではあまり扱われない内容や、先生とは異なる教授方法、子どもたちが普段学校でやっている学び方とは異なるやり方で、なるべくアプローチできないかと考えています。例えばアーティストたちは、子どもたちに何も「教えない」こともしばしば。特に目的を持たずに些細な音にひたすら耳を澄ませることも、自分の身体の動きで感覚を楽しむことも、人の身体の表現をじっくり見て何かを受け取り心動かすことも、世界と自分を把握する手段のひとつ。人格形成という本来の「教育」を考えれば、学校の教授・学習スタイルにはそぐわない学びだってあるでしょう。時にはそうした既存の学校教育に息づくシステムや文化を、アーティストとともにクリティカルにみることも、外から関わるものの役割かなとも思っています。

■世界の見え方・感じ方を広げていく

横浜市立勝田小学校(個別支援学級) アーティスト:尾形直子(ダンサー・整体師・ヨガインストラクター) 2017年9月11日、20日、25日、27日

施設名:横浜市立勝田小学校(個別支援学級)
アーティスト:尾形直子(ダンサー・整体師・ヨガインストラクター)
日程:2017年9月11日、20日、25日、27日

そんな思惑はともかく。現場で子どもたちがアーティストと共に時間を過ごしているときの、子どもたちの刻々と変わる表情を見ているのは至福の時です。人間の可笑しさ、情けなさ、心の動かし方の愛おしさをいろんな角度から見せてくれるアーティストとの表現に、私も一緒に救われるような時間を過ごしています。アーティストの世界の見え方・感じ方を、子どもたちとちょっと体験してみる。こんなふうに見て・感じてみると、友達ってこうかもしれない、自分ってこうかもしれないと、世界と自分を把握する新たな糧にしてもらえるような体験の場を、これからも丁寧につくっていきたいと思います。

STスポット横浜のコーディネートによる学校での取組みのレポートはこちら
横浜市芸術文化教育プラットフォームについてはこちら
(文・高荷春菜)

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